…次のニュースです。
昨夜未明、タニモリ区にある住宅街で火事があり、住宅1棟が全焼しました。
また、焼け跡からこの家に住む天啓崎 久遠さん(19)と見られる一人の遺体が発見され、警察は身元の確認を…
どこかの家、或いは家電量販店のテレビ画面に映し出されたニュース番組。
そして、そこで淡々とした口調で語られる、自分が死んだという事実。
青い背景と対照的に、赤赤と燃え上がる自宅。その隣に並ぶ自分の写真。
卒業証書を入れていると思しき書簡を抱えて正装をしている。自分でも思うが、相変わらずの不愛想だ。
…が原因であるとして、現在調査に当たっております。町の住人からは…
「ねぇねぇ天啓崎さん、どうだった?」
「何々!?なんか見えたの!?」
火災の損害、そして犠牲者についてはそこそこに、ニュースキャスターは画面をVTRに預ける。
次に映し出されるのは、テレビに出たがる近所の目立ちたがり屋…のはずだったが、耳には呑気なクラスメイトの声。
その声に、私は…
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クオン 「………!!」 |
…現実に、否。現在に引き戻されたのだった。
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天啓崎 久遠 現在相良伊橋高校2年(当時1年)。 女子バスケットボール部所属。 ポジションはシューティングガード。 好きな映画は『ミッドナイト・イン・パリ』。 |
こうなったのはごく些細で、それ故に迂闊なきっかけだった。
高校の入学式の日。
そこそこに長かった式も終わり、今後1年間は付き合っていく教室と担任、そしてクラスメイトとの顔合わせの場。
担任が当たり障りのない挨拶の文句を告げ、その後に来るのは自己紹介。
普通の高校なら名前と趣味、出身中学、あとは入りたい部活なんて言って終わりなのだろうが、ここは異能者が集うイバラシティの高校。
最初の3,4人は無難な、普通の自己紹介をして着席したのだが、その次の如何にも軽薄そうな男子が自らの異能をこれ見よがしに披露。(確かクラッカーから鳩だか何かを出していた気がする。興味がなかったのではっきり覚えていないが。)
それから皆、自分の異能も紹介していく流れとなったのだった。
そして私の番になった時、自分の異能を未来予知の様な物と言った時、数名の女子の興味を引いてしまったらしく、ホームルームが終わった途端彼女たちに机を囲まれ実演をせがまれ、今に至るというわけだ。
…そう黄色い声で羨ましがるような物ではないというのに。
私の異能、未来予知…否、『未来断定』で見たものは決して覆らない。
明日億万長者になるというヴィジョンを見れば、父が買ったたった一枚の宝くじが大当たりするだろうし、遥か遠い親戚の遺産が転がり込んでくるかもしれない。
次のテストで学年一位になるというヴィジョンを見れば、どれだけ授業態度が不真面目だろうが自学自習を怠ろうが、並み居る秀才を押し退けてその成績を取る。
あのニュース…私が19歳になった時、自宅の火災で死ぬという不吉極まりない知らせ。
あれもまた、決して避けられないのだ。
その日が来る前にどこに逃げようが、どんな対策をしようが、決して。
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クオン 「………」 |
その事実に、私は内心酷く狼狽していた。
だがそれも、時間が経つにつれ落ち着きに変わり、やがて諦観へと至った。
自堕落に生きよう。残りの2,3年の人生、最早何を積み上げようが努力しようが無駄なのだから。
その考えが変わったきっかけは、2回あった。
新しい方、2回目から言おう。その方が話がまとまると思うから。
それは保健室を訪れた日のコト。
その日の昼休み、私は部活中(この部活だって、本当は入りたくなかったのだがサイドテールの小柄な部員…後のキャプテン、皆藤千穂先輩…のやや強引な勧誘を断り切れずつい入部してしまったものだ)に怪我をする事が異能により確定している事を養護教諭の晴寺先生に告げに言った。
その方が面倒がないだろうと思ったからだ。
話の流れで、私の異能を無効化する術について言及し、協力してくれると言ってくれた。
いつもなら、そんな事はあり得ない。どうせ全て私の見たヴィジョンに帰結する。そう一蹴する所だった。
だが、気の迷いか。その時は……その言葉を、信じたくなったのだ。
そして、一回目のきっかけ。それは…
「初めまして!アンジニティサイドの案内役、エディアン・カグです。
記憶の関係で初めは頭がクラッとするかもしれませんが、すぐ慣れるかと思います。
………」
この戦争に、アンジニティの陣営として立った時だった。
(続く)

[843 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[396 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[440 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[138 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
[272 / 500] ―― 《大通り》より堅固な戦型
[125 / 500] ―― 《商店街》より安定な戦型
[125 / 500] ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
[24 / 500] ―― 《古寺》戦型不利の緩和
―― Cross+Roseに映し出される。
フレディオ
碧眼、ロマンスグレーの短髪。
彫りが深く、男前な老翁。
黒のライダースジャケットを身に着けている。
ミヨチン
茶色の瞳、桜色のロング巻き髪。
ハイパーサイキックパワーJK。
着崩し制服コーデ。
エディアン
プラチナブロンドヘアに紫の瞳。
緑のタートルネックにジーンズ。眼鏡をかけている。
長い髪は適当なところで雑に結んである。
白南海
黒い短髪に切れ長の目、青い瞳。
白スーツに黒Yシャツを襟を立てて着ている。
青色レンズの色付き眼鏡をしている。
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フレディオ 「いよぉ!なるほどこう入んのか、ようやく使えそうだぜ。」 |
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ミヨチン 「にゃー!遊びに来たっすよぉ!!」 |
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エディアン 「にゃー!いらっしゃいませー!!」 |
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白南海 「毎度毎度うっせぇなぁ・・・いやこれ俺絶対この役向いてねぇわ。」 |
ロストのふたりがチャットに入り込んできた。
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ミヨチン 「・・・・・?おっさん誰?」 |
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フレディオ 「フレディオにゃー。ピッチピチ小娘も大好きにゃん!」 |
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ミヨチン 「・・・・・」 |
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エディアン 「・・・・・」 |
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フレディオ 「・・・いやジョークだろジョーク、そんな反応すんなっつーの。」 |
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ミヨチン 「大好きなのは嬉しーけど、そのナリでにゃんは痛いっすよぉ! なんすかそれ口癖っすかぁ??まじウケるんですけど。」 |
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フレディオ 「え、あぁそっち?・・・ジョークだジョーク。」 |
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エディアン 「私はそっちじゃないほうですね。顔がいいだけに残念です。」 |
軽蔑の眼差しを向けるエディアン。
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白南海 「・・・別にいいだろーよ。若い女が好きな男なんてむしろ普通だ普通。」 |
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フレディオ 「おうおうそうだそうだ!話の分かる兄ちゃんがいて助かるわッ」 |
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フレディオ 「・・・っつーわけで、みんなで初めましてのハグしようや!!!!」 |
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ミヨチン 「ハグハグー!!」 |
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エディアン 「ダメダメやめなさいミヨちゃん、確実にろくでもないおっさんですよあれ。」 |
ミヨチンを制止する。
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フレディオ 「・・・ハグしたがってる者を止める権利がお前にはあるのか?」 |
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エディアン 「真面目な顔して何言ってんですかフレディオさ・・・・・フレディオ。おい。」 |
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白南海 「お堅いねぇ。ハグぐらいしてやりゃえぇでしょうに。」 |
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フレディオ 「そうだそうだ!枯れたおっさんのちょっとした願望・・・・・」 |
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フレディオ 「・・・・・願望!?そうかその手が!!!!」 |
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エディアン 「ゼッッッッタイにやめてください。」 |
フレディオの胸倉をつかみ強く睨みつける!
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白南海 「そういえば聞きたかったんすけど、あんたらロストって一体どういう存在――」 |
――ザザッ
チャットが閉じられる――