
何かを失ったものは、代わりに何かを得るという。
人並み外れた記憶力。世にも稀なる芸術の素養。天才的な語学力。
精神の領域における不自由と偉才の発現を、私たちはサヴァン症候群と呼んでいる。
神聖なるものに触れた人が錯乱し、異常行動をとるケースを「巫病」という。
オルレアンの乙女ジャンヌ・ダルクと恐山のイタコを結ぶ、たったひとつの共通項だ。
洋の東西を問わず、精神的身体的な不自由がシャーマンの要件となる文化があるように、
失うことを知らない人々は、何かを失った人を聖なる異能者と見なしてきた。
だとすれば、私たち異能保持者はいったい何を失ってしまったのか。
答えはたぶん、可能性。それとも人間らしさ? 呼び方は人それぞれでいいと思うけれど。
異能をある種の病気ととらえる発想は、今でも根深く残る偏見として社会に残り続けている。
制御のできない異能は、身体または精神の不自由と同様に、異能者の生活能力を阻害してきた。
先天的、ないし後天的に発現された資質が異能保持者を苦しめた事例は、枚挙に事欠かない。
どんなに綺麗な言葉で言い繕っても、覆いきれない事実がそこにある。
しかし、異能なるものへの否定的な言及は、異能保持者に対する差別や迫害を助長する恐れがある。
異能を病理と捉えて論じることは、今日ある種の禁忌と見なされている。
………ここまでが、私たちの暮らす表の社会の話。
Conseil Européen pour les Recherche de la Vie
―――《欧州生命科学研究理事会》。
その後継組織として創設された、欧州生命科学研究機構。
欧州内外の22か国から、7千名を超える研究者が送り込まれた合同研究機関。
異能の調査研究において、間違いなく世界最大にして最高峰の頭脳集団だ。
その存在を知る人は、四つの頭文字をとって《CERV》と呼んでいる。
私が11歳から6年もの月日を過ごすことになった、大きな大きなお家の名前だ。
研究所に移ってすぐに、友達ができた。
そう、友達ができたの! 箱入り娘の私に友達ができるなんて、誰が想像しただろう?
ラボには同年代の子供がたくさんいたし、私より幼い子の方が多いくらいで。
私たちの共通点は、異能に振り回されてきたこと。
異能の発現とひきかえに、きっと気づくことさえないままに、かけがえのないものを失ったこと。
望まぬ十字架を背負い、怪物のように怖れられて生きてきたこと。
そして、もしも。
奇跡が起きて、異能を手放せたなら、ごく普通の人間になれるかもしれない。
そんな望みを捨てきれずにいること。
身の上話は人それぞれで、心に負った傷のカタチも一人として同じ子はいなかった。
物心つく前に事件を起こして、悲しい記憶を持たない子たちも少なくなかった。
けれど、願いはみんな同じ。
………人間になりたい。せめて人間らしく生きてみたい。
理解と共感が絆に変わった。
みんな独りじゃ辛いから、身を寄せ合うようにして家族になったんだ。
CERVでは、異能の臨床研究が盛んに行われていた。
世間の常識に背いてでも、異能保持者の苦悩を癒すことを第一に考えていた。
つまりは「病」の治癒を目指し、現代医療では完治不能な症例には寛解を求める。
どうにか手を尽くして、子供たちが上手に異能と付き合えるようにする。
異能保持者を絶望から救うことは、異能犯罪を減らし、社会の安定にもつながるという。
一部の国で行われている、異能保持者への福祉政策のベースになっている考え方だ。
そういう意図もあったかもしれない。けれどそれ以上に、どの先生も使命感に燃えていた。
目の前で苦しむ子供を助けることに、理由なんか必要なかったんだ。
熱意は私たちにも伝わっていたし、先生たちの研究には協力的な子供が多かったように思う。
おいしいごはんと柔らかいベッド。清潔な衣服とすこしの玩具。それと手厚い教育も。
私たちの生活はたくさんの愛情でできていて、恵まれた暮らしをしていたと思う。
だから、自分が被験体のモルモットだなんて考える子はほとんどいなかった。
全くいなかった訳じゃない。それでも反発する子はいたんだ。
いまさら人を信じられなくて。胸に刻まれた記憶が凍てつくほどに哀しくて。
―――彼はブラジルから連れてこられた。荒んだ目をした子供だった。
ガリンペイロ
パパはアマゾンの奥地で働く黄金採掘者。
先生たちは彼を、ミダス王の再来と呼んだ。
その手で触れたものすべてを黄金に変えるチカラを持っていたんだ。

[843 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[396 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[440 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[138 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
[272 / 500] ―― 《大通り》より堅固な戦型
[125 / 500] ―― 《商店街》より安定な戦型
[125 / 500] ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
[24 / 500] ―― 《古寺》戦型不利の緩和
―― Cross+Roseに映し出される。
フレディオ
碧眼、ロマンスグレーの短髪。
彫りが深く、男前な老翁。
黒のライダースジャケットを身に着けている。
ミヨチン
茶色の瞳、桜色のロング巻き髪。
ハイパーサイキックパワーJK。
着崩し制服コーデ。
エディアン
プラチナブロンドヘアに紫の瞳。
緑のタートルネックにジーンズ。眼鏡をかけている。
長い髪は適当なところで雑に結んである。
白南海
黒い短髪に切れ長の目、青い瞳。
白スーツに黒Yシャツを襟を立てて着ている。
青色レンズの色付き眼鏡をしている。
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フレディオ 「いよぉ!なるほどこう入んのか、ようやく使えそうだぜ。」 |
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ミヨチン 「にゃー!遊びに来たっすよぉ!!」 |
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エディアン 「にゃー!いらっしゃいませー!!」 |
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白南海 「毎度毎度うっせぇなぁ・・・いやこれ俺絶対この役向いてねぇわ。」 |
ロストのふたりがチャットに入り込んできた。
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ミヨチン 「・・・・・?おっさん誰?」 |
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フレディオ 「フレディオにゃー。ピッチピチ小娘も大好きにゃん!」 |
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ミヨチン 「・・・・・」 |
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エディアン 「・・・・・」 |
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フレディオ 「・・・いやジョークだろジョーク、そんな反応すんなっつーの。」 |
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ミヨチン 「大好きなのは嬉しーけど、そのナリでにゃんは痛いっすよぉ! なんすかそれ口癖っすかぁ??まじウケるんですけど。」 |
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フレディオ 「え、あぁそっち?・・・ジョークだジョーク。」 |
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エディアン 「私はそっちじゃないほうですね。顔がいいだけに残念です。」 |
軽蔑の眼差しを向けるエディアン。
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白南海 「・・・別にいいだろーよ。若い女が好きな男なんてむしろ普通だ普通。」 |
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フレディオ 「おうおうそうだそうだ!話の分かる兄ちゃんがいて助かるわッ」 |
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フレディオ 「・・・っつーわけで、みんなで初めましてのハグしようや!!!!」 |
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ミヨチン 「ハグハグー!!」 |
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エディアン 「ダメダメやめなさいミヨちゃん、確実にろくでもないおっさんですよあれ。」 |
ミヨチンを制止する。
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フレディオ 「・・・ハグしたがってる者を止める権利がお前にはあるのか?」 |
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エディアン 「真面目な顔して何言ってんですかフレディオさ・・・・・フレディオ。おい。」 |
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白南海 「お堅いねぇ。ハグぐらいしてやりゃえぇでしょうに。」 |
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フレディオ 「そうだそうだ!枯れたおっさんのちょっとした願望・・・・・」 |
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フレディオ 「・・・・・願望!?そうかその手が!!!!」 |
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エディアン 「ゼッッッッタイにやめてください。」 |
フレディオの胸倉をつかみ強く睨みつける!
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白南海 「そういえば聞きたかったんすけど、あんたらロストって一体どういう存在――」 |
――ザザッ
チャットが閉じられる――