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【Y】 |
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……『Hello World』 |
ようやくこのときがきたね、《否定の世界》アンジニティ対《響奏の世界》イバラシティによる侵略戦争。
勝ったほうがイバラシティの住人となれる権利を獲得する、馬鹿げた戦争だ。
しかし、あの仮初の人格もなかなかいいものだね。
本命はこの侵略戦争だが、少しばかりいいものを見せてくれたお礼に助力してあげるのも悪くないかもしれない。
まあ、あくまでも私に植え付けられただけの存在。
いずれは消えていく運命だけどね……。
――さてと、そろそろこの侵略戦争とやらについて考えを整理していこう。
……。なるほど。
どうやらイバラシティ側の"嵐が丘エリカ"の記憶を閲覧したところ、身の回りに数名の裏切り者がいるようだね。
あの荒廃した世界に私以上長く居続けて、なぜその選択肢がとれるのか。個人的には興味深い。
よほどの物好きか、お人好しと見た。出来ればぜひ争わずに友好的な関係を築き上げ、どうしてその選択肢を選んだかも聞いてみたいものだよ。
記憶をたどれば、今の所そちら側についているのは"ティーナ"と"鳴"と呼ばれる少女。
後者はまだ会ったことはないが、記憶を元に近づけばなんとかなるだろうか……。
――それとひとつだけ不可解な点があれば、もうひとりいた"イバラシティ側に加担していたアンジニティ住人"の仮人格"かりん"と思わしき人物が未だにイバラシティで存在が確認出来ていない点だ。
彼女はどこにいった?もう少し相良伊橋高校を重点的に調べておくべきだったか……。
……いや、ひとりだけ候補はいるが、これは少し接触してみる必要がありそうだ。
しかし、それにしてもこのワールドスワップとやらは少し違和感を感じるね。
そもそもだ、
なぜアンジニティとイバラシティの住人で争わせるのか。
ワールドスワップそのものに莫大なコストか大規模な発動条件を満たす必要があるのだろうが、そもそもの話しだ、住人をひっくり返したところで何が変わる?
私達アンジニティに平和な生活を与えるだけに、ここまでの大規模な術を使うものがいたとしたら、それこそただの偽善者じゃないか。
――おそらくだが、一時的に『仮初の平和な生活』を与え、さらに『戦えばその平和が手に入る』という大きな釣り針でアンジニティ共をおびきよせていると考えてよさそうだね。
……となれば、私もいいように踊らされているというの?
――だが、どのみち私にはこの道しかない。
必ずこの戦争に勝利し、一時的にイバラシティ側に転移した後に再び異世界へ渡る。
それこそが私のすべき唯一の救い。
まだ、やるべきことが山ほどあるのだよ。
かつての友と再会する、あの七色の塔を共に冒険した彼らと出会うため。
そして、いつか……師匠。トーチ・ショコラケーキのところへ帰る……。
それが私の使命。
……ああ、でも今の私を見てどう思うだろうか。
他者から奪い、騙すことでしか平和を享受できないというのであれば。
いっそのこと……アンジニティでくらすのも悪くないかもしれない。
ふふふ、ダメだね。まだこれからだというのに弱気になってちゃ……。
これからきっと、たくさんの地獄を見ることになるかもしれない。
まだだ、まだ……立ち続けて笑っていなければいけない。
私は
甘味の魔女……エミュレッタ・ショコラケーキ。
偉大なる甘味の魔女は、誰にも負けない……イバラシティの連中にもアンジニティの連中にも……。