［基本］OK.　［戦闘］OK.　［スキル］OK.　

　
　
――思えば、お前には辛抱させてばかりだった。


誰かに寄り掛からないと立っていられなかった俺と違って、誰より芯の強かったお前は、
多分たくさん我慢して、周りの見えない俺の後を着いてきてくれたんだと思う。



「誠さん――」



始まりは多分、一目惚れだったように思う。
いつの間にかそこに居て、いつの間にか…無くてはならないものになっていた。


何処か儚げなお前が笑うのが好きで、くだらないことをたくさんした。
学生の時分、人に凄むことしか知らなかった俺が、初めて真剣に人を楽しませることを考えるようになった。

ある意味、今の俺の人と成りを作ったのは、間違いなく…お前だったよ。



自分でも全く気付かなかった能力のことが分かってからは、協会に職員として引き取られた。

それからは、段々と…本当のことが話せなくなってきたけれど、
あの当時、俺は嘘が今ほどうまくはなかったから…、
賢しいお前にはきっと、全部分かっていたんだと思う。


それでも、お前は俺の傍に居て、それから少し――
いや…、結構時間がかかったようにも思うが、俺たちは…、一緒になった。



それからかざみが生まれて、心の底から幸せだった。

どれだけ虚飾に塗れても、それだけは…本当の気持ちだった。



ただ…俺は本当に、周りが見えていなかった。
そう、何も見えちゃあいなかったんだよ。


『出世が男の本懐』と。

そう思い込んでいた俺は、どんどん仕事にのめり込んで行った。

それこそ、寝る間も惜しんで働いたさ。
それが、家族のためになると…本当に信じていたんだ。



だから、”あの日”も俺は家に居なかった。

日本で収容している調査対象の戸籍改竄について、
行政とすり合わせを行っている最中だった。

気付けば、今年中学生になろうという娘から多数の着信が入っていて、
折り返すと、嗚咽塗れの声が返ってきた。



『お母さんが――』



その時、初めて気が付いたよ。

俺はただ、家族のためにと自分に言い聞かせながら、
結局は…、自分のために生きていたんだと。



お前は強い女だった。
本当に強くて、我慢が足りて。

俺は、自分の妻が、身体の不調を隠していることに…、
全く、自分でも呆れる程に…、気付かなかったんだ。



それからは、ありとあらゆる方法を試した。

恥も外聞もなかった。
今まで積み上げてきたものがどうなろうと、もう、どうでも良かったんだ。

ただ、今にも失われようとしている時間を、未来を…奪われたくなかった。
取り戻したかった。



それでも、あぁ、だめだった。

何もかも…、遅かった。

麻酔で眠っている妻を前に、あらゆる物質の除去に特化したＡ-19――
金錆ほまれが黙って首を振るのを見て、何かが壊れる音を聞いた気がした。



頭では分かっていたんだ。
それは治癒ではなく除去であって、遅すぎては殺してしまうと。


頭では分かっていた。

それでも、気が付けば俺は、彼女に掴みかかっていた。
もしかしたら、反撃にされ、そのまま錆に朽ちて死にたかったのかも知れない。

だが、それも…、果たされなかった。
彼女はただ、保全員が止めに来るまで…黙って俺に殴られていた。



『零れて行く水を受け止めるには…、あなた方に残された時間は余りに少ない。
　それでも…せめて、苦痛を感じる事のないようにして置きましたので、
　どうか…後悔のないようになさって下さい。

　遺されるあなたと同じように…、遺して逝く者もきっと、
　苦しんでいるのだということを…、忘れないで。』



彼女の言った通り、俺たちに残された時間は…余りに短かった。

結局、早咲きの梅の散る頃、二度目の桜を見ることなく、お前は逝ってしまった。



失って初めて、というのは良く言われるが、本当にそうなのだと実感したよ。

俺は、どんなにか、お前に支えられてきたと思う？
俺は、お前が居ないとだめなんだよ。

俺を置いて行かないでくれ。


はつな。



それからの事は、今でも思い出す度…自己嫌悪で死にたくなる。


１人分広くなってしまった家に引きこもっては、
酒に溺れ…、脳みそを支配する後悔から…ただ、逃れたかった。

不貞腐れて、喚き散らした。



俺は…馬鹿だったんだ。
自分一人が取り残され、自分一人が苦しんでいると思っていた。


お前も同じ気持ちだっただろうに。

お前はどんなにか、辛かっただろう。
哀しかっただろう。



階段から転げ落ち、意識が途切れるその瞬間まで、俺はそんなことも忘れていた。



俺は気が付くのがいつだって遅くて、いつだって守れなくて。

本当に、失格な父親でごめんな。

それでも、これからは…、俺が全部ちゃんとするから――


許してくれ、かざみ。



『特定記録保護室　特別保管記録』

チェックポイントから天に向け、赤色の光柱が立つ。

次元タクシーで行けるようになったようだ。

ユイ(64) は 柳 を入手！
シキ(113) は 杉 を入手！
魔女ナヴィーニャ(326) は 古雑誌 を入手！
赤錆(524) は 杉 を入手！
魔女ナヴィーニャ(326) は 毛 を入手！
ユイ(64) は 羽 を入手！
シキ(113) は 花びら を入手！
赤錆(524) は 美味しい草 を入手！
ユイ(64) は 何か柔らかい物体 を入手！
赤錆(524) は 何か柔らかい物体 を入手！
魔女ナヴィーニャ(326) は 何か柔らかい物体 を入手！

ウルド(1101) とカードを交換しました！

新しいスキルが欲しい （アクセルフォーム）


アクアヒール を研究しました！（深度0⇒1）
アクアヒール を研究しました！（深度1⇒2）
アクアヒール を研究しました！（深度2⇒3）

ユイ(64) に移動を委ねました。

チナミ区 D-2（ベースキャンプ）に戻りました！
体調が全回復しました！

『チナミ区 H-15：釣り堀』へ採集に向かうことにしました！
　　 - ユイ(64) の選択は チナミ区 H-15：釣り堀
　　 - シキ(113) の選択は チナミ区 H-15：釣り堀
　　 - 魔女ナヴィーニャ(326) の選択は チナミ区 E-5：出発地
　　 - 赤錆(524) の選択は チナミ区 H-15：釣り堀

MISSION!!
チナミ区 P-3：瓦礫の山 を選択！
　　 - ユイ(64) の選択は チナミ区 P-3：瓦礫の山
　　 - シキ(113) の選択は チナミ区 P-3：瓦礫の山
　　 - 赤錆(524) の選択は チナミ区 P-3：瓦礫の山

―― ハザマ時間が紡がれる。









時計台の前でタバコをふかす、ドライバーさん。






時計台をぼーっと見上げる。






自分の腕時計を確認する。






･･･とても嫌そうな表情になる。

瓦礫の山の上に立つ、棒のような何かが呼んでいる。







チーン！という音と共に頭から湯呑茶碗が現れ、それを手渡す。

　

　

　






地面からマイケルと同じようなものがボコッと現れる。