腹が立つ気にくわないくそくそくそくそ何なんだ…………ッッ!!
おれは、イバラシティの、おれとは……違うッッつッてんだろうが!!
オマケに同高の奴らには煽られるし。水掛けられたし!!
おれを誰だと……くそッ。
おれは怨霊だ。咎人だ。ずっとのうのうと生きてきたお前らとは、全部、何もかも、違う。
――侵略開始より、4時間目。
身近な奴が『侵略者』だった。アンジニティのくせに"あっち"に付いた奴らが何人もいた。
『否定』されたおれを嘲笑う奴がいた。イバラシティの記憶に苛まれるアンジニティがいた。
色んな奴らから、一時間毎にチャットが送られてくる。
その度に何だか、……苦しい? 息が、詰まりそう? 違う。そんなの、おれは誰より知ってる。
……あいつらはおれのことを、ずっと友達――イバラシティの住人だと思ってたんだろうな。あはは、ざまあみろ。
アケビ。お前、おれと対峙した時すっげえ良い顔してたよ。今、おれのことどんな風に思ってんだろうな。サイテーな奴?
東堂。"いつか"なんて、何制限決めちゃってるんだよ。
そんなこと言わなくても、向こうのおれは元からその気だったのに。でも、全部遅いんだよ。もう。
瑠璃井。お前は何にも知らねえんだ。お前が『眩しい』なんて言った高国藤久はおれじゃない。
……有一、先輩。おれは。
……先輩…………先輩は、
思わず、再びCHATを開いていた。雪瀬に小学生みたいな返ししちまったなあ。だって、音割れするくらいの勢いで言われたんだぜ。仕方ないじゃん。
……何なんだよ。イバラシティの記憶がそんなに大事かよ。分かんねえよ、……なぁ……。
ふと背に。声を掛けられる。
……魔術師だ。海に沈んでいたおれに取引を持ち掛けてきた、腹の底の読めぬアンジニティ。
「そう。ボクたちは利害関係。
だから……そう、貴様に言っておくことがある」
一々からかいを挟んで来る奴だが、その言葉は確かな説得力がある。
けれど、生憎今のおれは機嫌が悪い。振り向かなければ返事もせず、耳だけを傾けた。
すると魔術師は、こう口にしたのだ。
「
イバラの連中は敵だ。」
「
――制圧しろ。蹂躙しろ。
沈めろ。埋めろ。絡め取れ。」
「
"死んだイバラ連中"だけがボクたちの仲間だ。
生きてる連中は……心を攻める敵でしかない。」
あぁ……。
そっか。そうだよな。あはは。
希望なんて、元よりイバラシティ陣営の屍の先にしか無いのだ。
分かっていた。分かっていたとも。
――気付けば、息の詰まるような心地は消えていた。