まあ、ちょっとした愚痴だと思って聞いてくれ。
俺、こう見えて昔は天使だったんだ。
あ?じゃあなんで悪魔なんかになったんだって?
仕事が辛かったんだ、天使の仕事も楽じゃねぇんだよ。
そんな仕事で心も体もボロボロだった俺の癒しだったのは人間だった。
別にどっかの人間に恋したとかそんなきれいな話じゃねぇ、
ただ単純に人間が生きているところを見るのが好きだったんだ。
人間のどこがいいか?
そんなん全部に決まってんだろ、俺ら悪魔とか天使が持ってるような力と頭がない癖して高い建物とかすっげぇ建造物とか作り出すんだぞ?普通にすごいだろ?そんな弱いのに這い上がっていくところ見てるとよ、なんか癒されるっていうか、元気が出るんだよ。
そんで、ある時俺は思った、『人間と話がしたい!』ってな。
まあ、天使が人間と話すなんて言語道断前代未聞だから無理な願いなんだろうなぁとか思ってた、
そしたら、あの大天使ルシファーが神に反旗を翻すときたもんだ!
悪魔だったら簡単に人間の所に降りられるし契約の時とかで話す機会があるだろ?
それにあのルシファー側につけば絶対に神に勝てると思ったからな、まあ、結局負けたけどよ。
そんな理由で俺は堕天して悪魔になったってわけ。
堕天してからは階級上げるために仕事三昧、下っ端だと自由に動けないからな、人間と会いたいって気持ち一心で頑張った、多分天使の時より働いてたと思うぞ。
そんで順調に出世の階段を上ってった、正直トップ10には入るぐらいまで階級上がってるとは思わなかったけどな。
トップ10に入ると俺の夢を叶えるチャンスがすぐにやってきた、人間が悪魔と契約したいって事で俺が行くことになった、俺はかなりワクワクしながら召喚に応じたよ。
けど、俺の見てた夢は叶わなかった。
なんで・・・って、言わせんじゃねぇよ、俺の見てきた人間じゃなかったんだよ。
なんて言うかよ、こいつら生きてんのか?ってぐらいに気持ち悪い目をしてやがった。
よくわかんないか?じゃあ分からなくていい、お前はそんな目はしてないからな、知らなくていい。
そん時は心底がっかりしちまってさ、契約したい奴と周りにいた奴何人かの魂持って行って帰っちまった。
階級高かったし契約が決裂することも多いから、誰も文句言わなかったけどよ、普通そんなことしねえよな。
それからどうしたかって?
天使の頃に逆戻りだよ、ただただ仕事をこなすだけの生活さ。
いや、天使の時より酷いか、癒しが少し薄れちまったからな。
契約の話もかなりの数こなしてみたりしたけど俺が見たい人間に会うことは出来なかった。
こだわり過ぎたって?うるせぇ、顔だの性格だの金だの色んな物で区別するような奴らに言われたかねぇよ。
っま、そんな感じで今の今まで満足できない生活を送ってわけだ。
ん?今はどうなんだって?
そんなん決まってるだろ、満足してるよ。
今まで会いたかった人間はお前みたいな奴だったんだよ。
・・・初めて会ったとき、笑顔で俺の名前を聞いて来たろ?
そん時は変な奴だなとか思ってた、でも会話ってその挨拶から始まるもんなんだよな、名前を知らない相手へ名前を聞く、うん、ごく普通。
それから俺のことどんどん質問攻めしてよ、正直あの質問攻めはめんどくさかった。
おいおい、謝ることねぇよ、あれのおかげで打ち解けたしお前も俺のこと色々と知れたろ?
結果的によかったじゃねぇか。
俺、心底お前と出会えてよかったって思ってる。
こんなに心動かされて、一緒に笑える人間が居るなんて思いもしなかった。
数千年だったか数えてねぇけど、長いこと頑張ってたのはお前の為だったのかもって思えるぐらいにな。
・・・ありがとうな、俺と出会ってくれて、お前がいなかったらどんな悪魔になってたんだろうな、俺。
っと、おいおい、いきなり抱き着くなよ、危ないだろ。
・・・っふ、おう、どういたしまして。
誰かとの会話の記憶