【―???―】
――戦争とはいえ、不法侵入である。ついでに盗賊行為も働いているようなものである。
だが、前の住人がどこかへ行ってしまったならその間くらいは、今ここを利用せんとしている
自分たちが使っても構わないだろう。
缶詰とか、新聞とか、洗い立てのシャツに石鹸洗剤、その日の夕食にしようとしてたであろう
食材とか。保存食の缶詰を台所の棚を漁って拝借し、半ダース分ほどを両腕に抱え、2階へと
足を運んでいく。
一歩、階段を踏みしめる度に軋む音。木製の階段は軍靴の重みを、兵士の重みを耐えるように
軋みをあげている。そうして2階に上り切り、偵察するに適した部屋――――カランタンに
面した部屋、寝室に缶詰や偵察用の道具を運び込んでいった。
既に置いてあるベッドの位置を壁側に移動させ、窓際で色々と偵察できるように整える。
エンドテーブルを動かし、そこに時計やら缶詰やらを置く。灯りは床に蝋燭を置いて、夜に
なったら窓からはなるべく離すようにしておく。人が居ると悟られてはいけないためである。
一頻り偵察の準備が整い、缶詰を開ける前に、一度カーテンが窓に
掛かっていることを確認する。それから、L字の望遠鏡をカーテンと
窓の間に目立たないよう差し込んで万全の準備にしておく。
……外郭だけでも、まずは偵察する必要がある。
距離300mほどの場所に、国防軍のパトロールが迫ってきている。
寝室のしめきったカーテン越し、L字望遠鏡で観察すれば、
険しい顔の国防軍兵士が数名歩いているのがよく見える。
装備はどれも良質なもので、特に降下猟兵専用のヘルメットが目立つ。
――あのカランタンにいるのは、ただの国防軍ではないだろう。
国防軍の中でも選りすぐりの精鋭が集う、降下猟兵師団の兵士達だ。
その精鋭が歩哨という事は、市街地には親衛隊の誰かが居るのだろうか。
何方にせよ、歩哨の出回る時間、行動パターンを把握するために
メモを取っていく。メモを取りながら、寝室に置いてあった
時計を見て、時刻を書き込む。
・
・・
・・・
・・・・
・・・・・
・・・・・・
【夢とは】
突然、奇跡によってかなうものなんだ、と思う。
自分が欲しいと思ったものが、いきなり出てきて。
あの子は、一体どんな力を持っていたのか。
記述:レビン