「―――――――」
誰かが 何かを言っている
視界がぼやけて何も見えない
自分の中の誰かが、うろたえている
「―――には――ら―い」
誰かは、少しづつ、近づいてくる
その感情は悪意?それとも憎悪?
「ひつよう、ない」
奪われた術が振りかざされ、視界が再び真っ暗になる
どうして
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リア 「うっ・・・おえぇ・・・」 |
戦いの後、吐き気が収まらない。
先ほどまでの威勢はどこへやら、後悔と絶望の感情がぐるぐると駆け巡る。
自分で自分に嘘をついていたのだろうか、友人さえも敵に回し、侵略する覚悟があると。
結局のところ、めっきは剥がれ、ただ地面を見つめるだけ。
もう嫌だ、誰も傷つけたくない。
ただ平和に暮らしたい、青い空の下、誰かと笑い合いながら。
侵略なんて本当は最初から無理だったのだ。
誰も救われない、誰か、
たすけてほしい。
どうか、どうか、私の友を――
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??? 「もういい、"わたし"がやる」 |
――突如、意識が途切れた。
裏切られた
力を貸してやったのに、恩を仇で返しやがった
希望はことごとく打ち砕かれてしまった
力のほとんどは奪われ、残ったのは『複製品』
決して均等になる事はない収束の力
だかもう無意味、視界には何も映らず、何も聴こえない
自分の身体さえどうなっているかも分からない
"わたし"の他にもう一つ、『無垢』の感情が共についてきたようだ
つくづく運のない奴、もはやできる事は何もない
このまま暗闇で過ごすか、あるいはいつかこの身が朽ち果てるか
――もう考えるのもうんざりだ、思考を、止める――
「だれか、たすけて」
何かが、聴こえた
それは音ではなく、文字でもなく、声
"わたしでない私"は確かに『たすけて』と言ったのだ
言葉を聞いた時、自然とその身体に力を入れる
多分、"私"を救おうとしたわけではない
許せなかったのだ、希望という名の毒が
"わたし"と"私"を蝕んだ理不尽な毒が
だからこそ、強く念じる
動け!
動け!
"わたし"の身体よ、動いてくれ!
・・・ずるずる、ずるずると
その身体は動き始めた
次第に思考に交じって何かが聴こえ始める
その方向へ進め、なんでもいい
このままで終わってたまるか
そして、どれほど経っただろうか
その何かはハッキリと聞こえ始めた
『世界への侵略』と
そして、意識は途切れる
・・・まただ、また"私"が助けてと言っている。
馬鹿が、希望を見るからこんなことになるのだ。
侵略者がそれでどうする、このまま仲良しごっこでも続けるつもりか?
数日間付き合っただけのただの他人に"私"の何が分かる。
奴らにはきっと『助けて』なんて声は聞こえない。
所詮、捏造された記憶でしか関わっていない他人だ。
だから"わたし"が侵略しようと関係ないはずだ。
侵略し、希望を振りかざす者を抹殺し、そして"自分"に初めから希望なんてなかったと告げるのだ。
それこそが"私"にとっての最善、毒の摘出。
存在しないものには縋る事は出来ない、裏切られることもない。
偽りの希望に裏切られて助けを呼ぶぐらいなら、初めから希望なんてなかったことにしてしまえばいい。
だからこの場は"私"の代わりに戦う、侵略は完遂しなければならない。
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リア? 「・・・やれやれ、向こうでただの情緒不安定な外道だったな、下らない。」 |
ゆっくりと、立ち上がる。
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『嘘吐き』 「私は侵略者『The Lair』 希望という名の毒を浄化しに来た者」 |
誰に聞かせるわけでもなく、確認するように、小さく呟いた。