やっぱり、恐ろしいことだと思う
イバラシティで知り合った人が、もしかしたらアンジニティの人かもしれない
こちらで、戦うことになってしまうかもしれない
考えれば考えるほど、それは、とても恐ろしい事なのだけれど
けれど、それでもやらなければならないのだろう
アンジニティの人達の侵略から、イバラシティを護る事ができたら
アンジニティの人達が、どうなってしまうのか
それと考えると、それも、恐ろしくて仕方ない
それでも、これはやらなければならない事なのだろう
あのアナウンスが、聞こえたから
そして、俺なんかの力でも、誰かの役に立てるのなら
どれだけ恐ろしくても、それはやらなければならない事だし、やるべきことだ
noblesse oblige
兄さん達が、いなくなってしまった姉さんが、行ってきたこと
それと同じことを、俺もやるべきなのだ
それが、コンソラータの家に生まれた者の、責務なれば
兄さん達にだけ背負わせては、いけないものだから
玲さんや、杜若さんや、ヤナギ君や、登志郎さんや
イバラシティで出会った人達の事が心配だ
助けられてばかりじゃなくて、誰かの助けになりたい
アンジニティ、とやらの侵略の話
事実か否かに関わらず、俺はそれを「利用させてもらう」事にした
おひいさまが、しばらく家を離れ外に触れた方がいい、と言う意見については俺も賛成だ
アーキナイトと、ジブリル様と、俺、この三人で共通した意見であり、つまり俺達は共犯者だ
当主様とカプリス様も、おひいさまの身の安全の面を重視しすぎてしまっている
逆に、それがおひいさまを危険にさらしてしまっている事実に、気づいているだろうけれどそれしかできないのだろう
だったら、それ以外の事ができる俺達がやればいい
おひいさまの家出に俺が手を貸していた事がバレてすぐ、アーキナイトとジブリル様から提案された「おひいさまになるべく外と関わらせる」と言う守り方に俺は反対しなかったし、当主様とカサルティリオに告げ口しようとも思わなかった
どこまで、おひいさまが気づいているかどうかはわからない
わからないが、今のまま、「籠の中の鳥」のままでは駄目なのだ
おひいさまが、コンソラータの家の役目にこだわりすぎるようでは駄目なのだ
「そうしないでほしい」と言うのが、俺が「騎士」になった頃にはすでに亡くなられていた先代様とおひいさまのお姉さんの願いであると言う
そして、それが当主様と若様達の願いでもある
俺から見れば、当主様達上三人の兄弟も、自分だけが背負うように考えない方が良いんじゃないか、と思うけれどそこまでは口を出せない
とにかく、俺がやるべき事は、おひいさまが少しでも「籠」から出られるように、もっと色んな考えを持てるように手助けする事だけだ
その目的のために、アンジニティを利用させてもらう
おひいさまが「籠」から出るための「贄」となってもらおう
まさか、アンジニティの連中だって、楽勝に、何の犠牲もなしに、何のリスクもなしに侵略できるだなんて思っちゃいないだろう
そこまで頭がお花畑な連中ではないはず、当然、リスクなりは考えているはずだ
自分達の「侵略」と言う行為が、別の目的に利用されるくらいのリスクは大目に見てくれるだろう
利用されて怒るような連中だったら、その程度でしかないと言う事だ
その程度なのであったなら、たとえ侵略成功したってその先はたかが知れているんだから
とはいえ、アンジニティの侵略行為があると言う事実
その事実がおひいさまをイバラシティにとどまらせる、その事実を利用するということ
おひいさまには、なるべく知られずに行こう
自分のために誰かが利用されている、となったら、おひいさまは悲しむだろうから
おひいさまは、笑っていたほうが良い
九十九もそうだけれど、おひいさまも笑っていた方が綺麗だから
俺がうまい事やる事ができれば、最終的におひいさまは笑ってくれるだろうし、そうする事でコンソラータの家から俺の覚えがよくなれば、九十九を護ると言う俺の最終目標にも繋がる
その目的のために、何だって利用してやろう
だから、アンジニティも利用する。奴らは俺の踏み台で、足場で、「贄」だ