運命の赤い糸。なんてロマンチックな話じゃないけれど、人と人とは見えない糸のようなもので、繋がっているような気がしないでもない。それはか細くても切れない糸で自分がつないで覚えが無くても、どこまでも伸び誰とでも繋がっていく、それが便利かどうかはさておいて、そういうつながりというのは目に見えないからこそ、奇妙な運命という幻想に身をゆだねていられる。世界が広ければ、糸の外側にいる人を見かけるかもしれない、世界が狭いなら、大抵は糸の範囲に収まってしまうだろう。そのうえ大体の世界は狭いものなんだ。
　
　
　岩に繋がれるというのは、一種の刑罰のようにも思えたし、英雄譚ではそういうめにあった登場人物も居たような気がする。たいていの場合は自分から繋がれるわけではないけれど、彼の場合は自分から繋がれたと判断していいのかもしれない。ただ自分の自由にならない体を、自由にしないためというのは、他社の介入があって繋がれているのだと言うのも間違いではないだろう。二重の意味で自由を失った青年をしばらく見つめ、口を開いたのは私が先だった。
「……ひさしぶり？」
「そうだね」
「一体どうなっているの？」
「僕の身体は魔術で年齢を弄られていた。人間の身体的に一番よい時期というものを知っているかい？　彼らは効率を好むからね、『仕事』の時がくればこのとおりに、元に戻されるわけだ」
　なるほど。と得心した。それではあの姿こそが本来の彼というわけなのだろう、しかしどうなっていると聞いてすぐに答えたというのは、顔に疑問でも浮かんでいただろうか。
「グレイは私を護ろうとしたみたいだけど、それはなんで？」
「……君に借りが、正確に言えば君の師匠を殺してしまったことで、君に借りが出来ているから。では不十分かな」
　言葉が重い。その後悔が原因だというのはわからないわけではなかったけれど。身体の自由が利かず結果的に命を奪ったということであれば、少し弱いように感じて問う
「確かに、僕には身体の自由は無かった、君の師匠を殺す気もなかったし、できることなら、彼女の刃に斃れてしまいたかった。叶わなかったけれど」
「結果的に師匠を殺してしまったとして、そいれは貴方のせいじゃないんじゃないの？」
　これにはしばらくだまり、こちらの瞳を覗き込むようにして答えを返す、お互いの位置関係から、見上げるように見つめられている
「そうじゃない。そこに至るまでが問題なんだ。……君はそのことをわかっているはずだろ、自由は少ないけれど、平和な日々を過ごしていた彼女を、僕らがあの死地へと誘ったんだ」
「……それこそ間違いだよ。師匠は選ぶことが出来た」
　グレイの言うとおり私にはわかっていた。ユリウスが死に、彼の率いた革命軍が制圧され、拿捕されていった後で、彼らに支援を行った者を支配者達は探し出し、処刑することを決めたという情報が流れた。大きな衝突による世界の軋みを、少しでも早く収めるための決定だったように思える。
　……師匠は革命軍から距離を置いて居たし、尋ねられた際もそっけなく追い返している。少なくとも支援をしたという事実は無かったし、ユリウスが死んだことで、つながりは完全に絶たれたように思っていた。
　それなのに彼女の元へと召喚命令が届いた。状況から考えればそれに応じることは自ら死地へと歩を進めるのと差は無かった。師匠がそれをわからなかったはずはない、彼女がそれに応じたのは、当時の私には受け入れることが出来なかったけど、師匠の記憶を呼び起こしたことが原因だった。
　だから、それは違うと、今なら言えた。悲しくて仕方が無いけれど、それは私の所為だったと

足が地面につくと、そのままへにょりと力なく尻餅を。
自力では立ち上がろうとしても、なかなか上手く立ち上がれず。

膝を持ち上げたところで、バランスを崩して転ぶ。

“これ”と言いながら自分の体を見た。

プルプル震えながら小声で呟きつつ、チラッと横目で様子を窺った。

しばしの間、飛び散った破片はウンともスンとも言わず、死んだように沈黙していたものの、ある程度を集めたところでプルプルと震えだし、それぞれの破片に顔が浮き上がった。

それぞれの破片が語りだしたため、妙にステレオというか立体サラウンドっぽく聞こえる。

耳を差し出して目をつむり

同じくゲス顔！

フィーナさんの服に潜り込んで全身をこちょこちょしようとし！

スミレさんにもたれ掛かり、今にも寝そうな状態ですが、ギリギリで意識を保っているようです。　ただ、全身は脱力しきって朦朧としているようです。

剣を抜く、二度三度と素振りをして、目を瞑ると彼女の周囲に光が集まり、衣装を変化させていく

数度、電気が流れたような音がして、ふよふよと鞘に収まったままの剣が彼女の周囲を囲むように浮いた