『行き当たりばったりな冒険　〜ツルギの場合〜』



　とある世界、GC2075.07.21.17:15、とある個室にて――


　ぽちはベッドに着地した。
「漸く修理が終わったんだね。無事で何よりだよ」
　ぽちの言葉から長時間の修理だったようだ。
「君が無事だったのはいいけどさ。君、ちょっとは後始末も考えようよ」
「後始末？」
　ぽちは目をやや釣り上げる。
「……君、まさか昨日の戦闘を記録してないとか言わないよね？」
「ん〜。記録は残ってるな」
「マスターとボクが駆けつけた時、敵は倒されていたけど、
君は既に機能停止状態だった。君が人間だったら凄惨な光景だったね」
　感情を切り捨て、効率……敵を仕留めることを重視して戦った結果が
これである。記録は取ってあるが、何とも酷い有様であった。
差し違えてでも敵を倒すことを選択したのである。ぽちの言う通りだ。
人間ならば、吐き気を催すような光景だっただろう。
「あぁ、今回は蜘蛛みたいな奴と戦ってたな。機敏な奴で、
一撃が重かった。動きを止める方法がなくてな……あの様だよ」
　ぽちは身体を横に振った。
「だけど、安易に感情を切るのは駄目だよ。マスターにもきつく
言われてるでしょ。絶対にするなって」
「それはそうだが……」
「まぁ、今回は相手が悪かったし、仕方がないけどね。君の装備じゃ
仕留めるのが難しいよ」
　ぽちは翼を振った。
「……マスターは頭を抱えて、銀行へ行ったけどね。
うん、今回は仕方がないよ。敵が悪かったから」
「銀行？　通貨を取り扱っている機関か」
　ぽちは身体を揺らした。
「うん。予算も無限にあるわけじゃないからね。限りがあるからこそ、
大切に取り扱わなくてはならない」
「……え？」
「君に使われているパーツの一部はね、マスターの要望で特別な
パーツを使用しているんだよ。そのパーツの一部の代金の
何割かをマスターが負担することになっているんだ。
滅多に壊れることのないモノだけど、今回の戦闘で壊れちゃったね」
「え……」
「そのパーツって結構お高いよ？　君、わかってる？」


　ミライがマスターへ謝罪に向かった頃、グローリア博士は
目覚めた。
「……あれでいいの？」
　ぽちは博士を見上げる。博士はぽちの頭を撫でた。
「少しでも薬になってくれればそれでいいわ。安易に
感情を切って欲しくないもの」
　ぽちはくすぐったそうに笑った。
「えへへ……撫でられるの気持ちよくて好き♪」
「ロボットも……感情を持ったっていいのよ」

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