――世界とは、兎角理不尽なものである。

　＊＊＊

　朝日が顔を出すのと同じくらい。俺は最近の日課である早朝鍛錬をしていた。
　こっちの世界にきたときに、あの謎の筋肉親父から棒術の基礎を習った。それを元に、そしてそれまで経験した闘いを加味しながら、こうして毎朝鍛錬をしている。
　闘う事が日常となっている世界。そこで生きるには、俺はあまりにも足りていないんだ。とっさに敵を振り払えるくらいの技は、体に叩きこんでおかないと、

（甘えてばかりじゃ駄目だ）

　どういう経緯であれ、理不尽の顛末であれ。俺はここにいて、一緒に行動を共にしている、してくれている奴がいる。
　ならせめて、そいつが怪我を負うような要因ではあっちゃいけないと思う。男としてのプライドもあるけど、人として駄目だ。

「ふー……」

　素振りと打ち込みを終えて一息つく。結構動いて汗をかいた。水を飲もうとして、水筒の中身が空になっていたことを思い出す。確か、寝る前に飲んだっけ。

「まあ、近場にあるし」

　冷水が飲みたかったけど、まあ贅沢は言えない。

「泉の水を沸か、し……て……」
「この樹の右側に……」

　覚えているのは、思った通りの華奢な体があったってことくらいで。直後、強烈ビンタくらって吹っ飛んだ。正直、今までの戦闘でも覚えがないくらい吹っ飛んだ。
　この後、滅茶苦茶謝った。が、当の本人はすんげー蔑みの目つきで、

「今度から覗くんじゃないわよ」

　――世界とは、兎角理不尽なものである。

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