冬の冷え込みが厳しくなればなるほど、何でもない時に故郷のことを思い出すことがある。
　冬枯れ郷の名前は伊達でもなんでもない。イベール男爵領の冬枯れ郷にとって、冬は物忌みの季節だ。
　僕たちは固く戸を閉じてあまり表に出なくなるし、秋に挽いた粉や乾物や、倉庫の蓄えに頼って毎日、心もとない気持ちで春を待つ。十日に一度、集会場で顔を合わせて安全を確かめあって、倉庫の残りを計算する。定期的にタールピットの氷を割るための遠征隊が出る。
　ニューロにとって、冬っていうのはそういう季節だ。

　農家の多いメルンテーゼは、冬場の仕事はそこまで多くない。正月辺りになるとまとまった休みを取って、この時にまとまった休みを取りましょう、この時期は働いちゃいけません、っていう風習がけっこう、あちこちに残っていたりする。
　おせち料理って作り置き用の保存食を作ったり、あまり火や水を使わないようにしたり。

　正月は休む、働いちゃいけないと相場は決まってる。だから、正月の前後は三週間くらいお休みが出る。一揆だって基本は同じだ、何せ、中身が同じ農民なんだから。
　でも、やっぱり城内でこうやって一揆だなんだって騒いでる最中に、正月休みだって言われても全然、休んだ気がしない。

　ひい、ふう、みいとトムが指で数える。
　それで僕にも何のことか分かった。

　ちょうど森の中だし、と話していたところで、お互いにぴたりと言葉を止めて耳を澄ます。野菜を探す時は、気配を殺すことも大事だ。先手を取られるのは、農作業において大きな不利を招く。

　探していた声はすぐに見つかった。

　指差す僕を適当にあしらいながら、トムが弓矢の準備をはじめる。
　矢に塗っているのは、この間作ったという収穫用の毒液だろうか。

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※今回の日記は、この下の練習試合「トム・ノエルVSアルくん・おねえちゃん、ワンデーオープン七草狩り羽根つき大会ダブルスの部」に続いています。
※いつも通りPTMのENo.1741・トムをお借りしました。

衣越しに伝わるノエルの体温に感じ入り、全き油断。

先程よりも更に強烈な悲鳴を耳元で受け、つられて叫び声をあげる。
そうして全身が怯んだ所に差し込まれた腕は、その脱出を容易にした。

距離を取り離れたノエルの姿を、うらめしそうに見詰める。

差し出された腕を前に、不思議そうに。

次いで握手の作法の説明を聞くと、その姿勢のまま数秒の間をおいて。
されど迷い無く腕を伸ばし、ノエルの手をパシリと掴んだ。

その手の感触を確かめるように、がっしりと握り続けている。

ずっとだ。繰り返す。
ひどく平坦で乾いた声の筈なのに。

再び、喋りすぎた、というように視線を落とす。
けれど今度は顔を上げて。
口を閉ざすことはしないで、続けた。

ノエルの問いかけに対しては大きく頷き、鼻と鼻がぶつかるくらい間近に近寄る。

そして調子のことを問われると、しまったという具合に口に手を当てた。

メルンテーゼにも正月はある
冬という事もあり、農作業の手も休まり家族でのんびりと過ごすのが習わしだ
そして、半月程休んだのち農作業再開となるのだが、仕事始めにはちょっとしたイベントがある。
その年の、豊作と無病息災を願い、また、なまった体に活を入れるための儀式


それが『七草狩り』である！！

アル君と買い出しに出ていたおねえちゃんが、ラディッシュをくせ毛？で打ち返す

ノエルも打ち返すもんだから、もう、悲鳴だらけだ

ラリーは続く、なんとなく解った
ラディッシュさんの黒みも少し取れてきてるし、これはこれでいいのかもしれない。

不敵な笑みを浮かべつつ、大きな木さじ片手に素振りをはじめるあっぷら
いやに気合の入った風きり音を聞くに、どうにも良からぬ事を考えているようだ