時の流れは抜刀の如し早く。迎え撃たねば討たれることだろう。


　手渡された殻を少しだけ齧ってみたが、あまりよい味ではなかったのでやめた。
　まだら殿に随行した日は、なかなか楽しい一日であった。戦であることを忘れてしまいそうだった。
　そうだ、浮かれていたがこの世界は戦場。

　冷えた床の大理石の温度が足裏に直に伝わり、緩んでいた私の気を再び引き締めたことだろう。あの並んだ彫刻は何を意味しているのか？　一体新王とは何者なのか？　疑念もまだ尽きぬ所である。
　そして、このような場所と自分は全く吊り合わないな、という感慨を持った。私は未だに城下も見下ろせぬ。飛び方もままならない。地を這うただ一匹の鳥である。

　さりとて一抹の寂しさも、またこうして知り合えた仲間と出会えたことで払えた。
　……のはいいんだが。

　この面子、なんだか再び気が緩みかねない。
　とかげと、不思議な猫の群れだ（何故か中年男性もうろうろしていたのは、この際目を瞑る）。
　言わせてもらえば、動物小国状態だ。私のエンブリオも含めてだ。
　いや、世界のために戦っているんだ、それはよくわかる。
　わかるんだが。
　可愛い……。

昨日一緒にイカを食べに行ったばかりのまだらから手紙が届きました。

ミミズがのたくった様な字と共によくわからない絵が所々に書かれていました。
手紙のフチに何か濡れたような跡があります。

不思議な感じの服、だな――少しだけそんな事を思う。
通り過ぎようとしていた傍ら、声を掛けられ…視線を向けて。

わずかにこもる警戒の視線と、言葉。でも…
次に発せられた言葉は予想外に真っ直ぐな物だった。

ネイベールは神妙な面持ちで、
ナスルの指す石を眺め、示す言葉に耳を傾けている。

ネイベールはゆっくりと煙管を手に取る。

煙も吸わずに物思いに耽っていたが、ナスルの声で我に返る。

ネイベールは少し含みのある笑みを浮かべながら、煙管を吸った。

陽気に手を振りながら相手へと近づく。

ウィルトは　ふあんそうだ