俺の全身から赤かったり白かったりする液体が流れ出てきている。
それらは蛇口を全開にした水道のように際限がない。
一応、これは人間でいう『怪我の治癒を試みた状態』のはずなのだが。

流石に少し遊びが過ぎた…と思わされるようなここ最近の出来事。
無論、シオンはこのことを認知してはいないだろう。
案外…勝手に出て行った、とでも思ってるかもしれねーな？

―――無断で外出し、賞金首の連中共と殺し合いという名の遊びをやった結果がこれだ。
連中に切り落とさせた左腕は未だに再生しねぇ…要は再生能力にも限度があるってことは分かった。
そして、そこから放たれる炎も自分の意思では完全に制御できない、いわゆる気まぐれな発火現象に近いことも分かった。

…使いこなせねぇ玩具はイラ付くぜ。
勝敗の行方だとか、この体たらくだとか、そんなことよりも遥かに…だ。
人間ってのは、思い通りにことが進まねぇと精神を乱すって聞いたことがある。
……それに近い状態なんだろう。多分な。

身体を転がし、うつ伏せから仰向けに切り替える。
同時に、身体の中の液体の流れが変わったのを感じた。かといって身体の調子が変わるわけじゃないようだ。
…澄んだ青空が妙に嫌味ったらしいぜ。ちくしょうめ。

なんとなく叫びたくなった。
そして誰もいない周囲に空しく響き渡る俺の声を聞いているうちに…なんだか、頭がスッキリしてきた。

穏やかな風に肌や髪を撫でられながら考える。
とりあえず現状…やるべきことは1つだけだ。

ザッ……。
唐突に微小な物音がした。
落ち着いてるからか、静かな環境だからか、それもよく聞こえる。
…その音は徐々にこっちに近付いてきてるようだ。
地面に突っ伏したまま、音のする方を向くと…。

相手は答えず、そのまま俺に近付いてくる。
…その反応が、今に始まったことじゃないのは知っている。

相変わらず反応はない。
……段々とイラ付いてくる。

そいつは俺に手が届くであろう距離まで近付いた途端、足を止め。
代わりに俺の方へと何かを差し伸ばし始めた。

★執事の手記★
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頭を下げられ、此方もペコリと頭を下げ、おずおずと頭を上げて目の前の彼を見る。

ころころ雰囲気変わるよーな気がする、目の前の男の子を見ながら

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ようやく長話が終わる。溜まっていた鬱憤を吐き出したため、少しご満悦のようだ。

体質への問いに対し、何かを懐かしむように一瞬遠くを見つめる。

シオンの服に対する拒絶が弱いのを見て取ると、ふふっと笑い、

そう言うと、どこからともなくフリフリのゴシックドレスと化粧道具を取り出す。

少し妖しげな笑みを浮かべ、じりじりとシオンの方ににじり寄っていく…。

心当たりでもあるのかため息を重ねていく。

ヴェイナスは相変わらず、動じていない

それだけいうと、立ち去るつもりなのか、歩き始めた。
しかし、途中で足を止めて振り返り

フードを被り直すと、今度こそ、立ち去った。