むかしむかし、ぼくが苗床から生まれてすぐの頃、火事があったんだって。
それでぼくの里は燃え尽きちゃって、今は一面焼け野原。
苗床もなにもかもみんな灰塵、風に吹かれてぴゅううううう。
残ったのはたくさんのどくにんじん。（この火事で死んだどくにんじんは誰もいないんだよ！）

残ったぼくらはぼくらを食べて、より強いにんじんになって旅に出た。けれどもぼくは森に残った。
だって、100匹のにんじんがいたら20匹のにんじんは遊ばなきゃいけないのだ。これは生物として逆らえないことである。
さてさて、そうして残った僕たちもずうっと遊べたわけじゃなく、4匹残して残りは苗床を探すことになった。
けれども森に入ってくる人たちはいまいちぴんとこないし、たまに帰ってくる仲間が連れてくる苗床はみんなちんくしゃでこれもまた違うのだ（それなりに美味しかった）。

4匹残ったにんじんも3匹旅に出て今はぼくひとり。
苗床はまだ現れない。
旅に出た仲間の帰りも減ってきた。

そうして今日も明日も過ぎていき、ぼくはずっとここにいる。

　万已楽は推進機を動かし2mほど空中に浮かび停滞し、地中からの襲撃に備えることにした

　万已楽はなにやら考え事をしている
　空中へ襲撃する手段があるなら今がチャンスかもしれない

[>アサミは足を引っ込めた！

[>ハナガサがにんじんを引き剥がそうと近付いてきた！

ノームのおじいさんまでエキサイトしてきた。

その隙ににんじんが技を叩きこむ！


にんじんの　ストーンブラスト！
Critical Hit!!
Critical Hit!!
Critical Hit!!
すずめに 11526のダメージ！

もう何だか訳が分からない。

にんじんを見る。

やっぱりにんじんを見る。

首を傾いで一言問うた。

焔詠はどくにんじんを振りほどき逃げ出した！！

なんだかベルが慌てているような気がする。
別にシェイドのエンブリオが人型でも良いと思うのだが。

そんなことを考えていると、俺の頭の中に突然声が流れ込んできた。

いきなり脳内に直接声を飛ばすとは。
やはりこのにんじんかなりの呪術の使い手だ。

しかも、思ったことまでこちらに流れ込んできている。
自由すぎるだろう。

少女はなにか考え事をしながらこちらに向かってきていた。

少女が声をかけてきた。
だがそれはトリーにではなく、そこにいるどくにんにんに話しているように見える。

少女は『異世界』について話しているように聞こえる。
しかも真面目に聞いているように見える。


貴方は少女の質問に答えますか？
はい　いいえ

はしゃぐ様子にちょっとビクリと。
自分が竜であることや、竜というものが珍しい……という概念はどうも慣れない。
それは自分が（同族とはいえ）竜ばかりが暮らす場所で育ったこともあろうが。

胸を張り子供ではないと主張する様は微笑ましい。
何だか懐かしいものを感じつつ頭をぽんぽんと撫でてやる。
帰ろうと思わなかった云々には、度胸があるのか恐れがないのか…と呆れつつ。

複雑な顔で穏やかに笑むのであった。

猛烈なタックルでにんじんに弾き飛ばされていった。

まさかにんじんにタックルされるなんて想像もしなかったので、それはもう凄い勢いで。

叱られた幼子のように、視線を逸らして答える。

怒られた理由がよくわかってはいないが、一応反省しようとはしているようだ。

とてもとても不思議そうに首を傾げている。

にんじんは名残惜しいけど目の前にもっと不思議なにんじんがいるからそこは我慢したらしい。