「…さて。 これでお別れね、御舟」
「先生……本当に行ってしまわれるのですか？」

一週間前の二十六夜とは逆の向きになった三日月を見ながら、師がそう言って立ち上がった。
未だに現実味の湧いていなかった俺は、その言葉で漸く師が行ってしまう事を実感した。

「まぁ、1週間前にそう言ってたし…そろそろこのゲームも潮時かと思って」

手で服に付いた埃を掃いながら、師がそう言うのを黙って聞いた。
一字一句間違わぬよう、記憶から消してしまわぬよう……ただ、黙って聞いていた。

「…この世界は、同じように存在する平行世界の一つ、所謂パラレル。 私は、その一つの未来を大きく変えてしまった」
「……すると、この世界はどうなるのです？」
「特に何も。 でも、私が体験したこのストーリーは正史と全く違った物になるから、
　この平行世界は私達の世界からは認識されなくなる。 私の記憶と、ソフトだけに残る事になる」

少しだけ気になったので、ぽつりと師に質問してみた。

「…なら、良いです」
「え？」
「先生が僕を忘れる訳じゃないなら、それでいいです。 平行世界なんて、僕にはサッパリだし…」

師の言った事は、あの時の俺にはあまり理解出来なかった。
けれども、意味が解るようになった今でも、俺はああ答えて良かったのだと思っている。


(中の人がポケモンやりたいのでここまで)

そう言いながらも人相顔を受け取る