俺様は猫である。
名は無い。
俺様を見た人間がネコチャンとかクロとかノラとか勝手に呼ぶから、適当に返事をしてやっている。ニャー。





メルンテーゼ外の某世界のとある地方の某屋敷にて。

「そいえば最近、見かけないね。」
「何を？」

「ほら、前はちょいちょい来てたじゃない。」
「…隣の市から野菜持ってきてくれる大野屋さん？」
「違う。」

「魚介届けてくれる三笠屋さんはー、一昨日来たばかりだし…
中学の時の友達は確かに来ない…と云うか、僕らが呼ばなければ来れないけど。元々ちょいちょいは来てなかったよね。」
「いやだから違うっつーの！猫よ、猫！
しょっちゅうネズミの死骸持ち込んで勝手に縁側で昼寝してるあの黒猫！」

「ああ、あのノラならば大野屋さんに追っ払われてどこかに行っちゃったみたいだよ。」

「…なんで八百屋さんが勝手にうちの猫を追い払うのよ？」
「別にうちの猫じゃないでしょ。入り浸ってるだけのノラだし。」
「うちに入り浸ってて、あんだけ寛ぎきって寝てるならうちの猫みたいなもんでしょ！」

「その寛ぎきってたのが油断だったんだね。多分二股尻尾を見られたんじゃないかな。
大野屋さん、化け猫が出たって騒いでそれっきり、うちに来なくなったし。」
「へ？バケネコって？」
「うん。ほら里外部の人は妖怪慣れしてないから…あの程度のほとんど普通の猫と変わらない猫又でも怖かったみたいだよ？」

「いや、化け猫…猫又って、あのネコちゃん、猫又だったの！？」
「……気付いてなかったんだ、かなちゃん。」

魂胆……？言葉遣いが若干怪しいがまあ大変感心して猫又に一目をさらに置いたようだった。

めずらしく　チュン　と鳴かない。

首が折れたら死んでしまうことは、さすがに分かるらしい。

やっと　たべられたらダメだと断った。流石スズメ脳。
だが捕食者に断ったところで、お願いを聞いてもらえる訳はないあたりに、まだ気が付いていないところが、全くもってスズメ脳。

足元にすり寄る黒猫、

慌てて飛び退くが、それ以上は動けないようだ。

纏っているコートのフードをかぶってうずくまる。

なにかカリスマ的な防御態勢を取ること数分、

やはりそこに居る黒猫に、もはや打つ手なしなようだ。

（猫の背中で飛び跳ねるノミに見とれている・・・・）
（嘴のはしから、なぜか透明な液体がたれ・・・）

猫は咥えていた鴨を解放する！

鴨は葱を振り回しながら 猫から逃げ 敵陣へ突っ込んで行く！！

猫は、戦い疲れてへばった鴨を捕獲した。ガブリ。

鴨は首根っこを猫に咥えられ、お持ち帰りされる…

キリッ

俺様に続け、下僕共。

どんどこ根を伸ばし増殖する葱に、鴨も困り顔。

ほくほく♪