ファイが話しかけた獣が、キラーインコを手に入れるために、森林へと足を進めるところだったこと、進行したその日にお目当てのキラーインコが出てきたこと、想定よりも余裕で倒せたこと。
これらの偶然と幸運が重なり、ファイはようせいの予想をはるかに超えた速度で、キラーインコと契約することができた。

キラーインコの愛称は、とり。理由は鳥だから。ファイらしい、あまりにも安直すぎる名付け方だ。
当のとり本人は、自分の愛称が気にいらないようだが。

ファイはにゃーの時と同じように、じーっととりを観察していた。

その視線を不愉快だと思ったとりは、ぷい、とそっぽを向いて拒否をする。

思わぬ質問を受けて、とりは唖然とする。

誰もが知っている当たり前のことを聞くファイに、とりはただただ戸惑い、どう返すべきか迷ってしまう。そんなとりを、ファイは何も言わずただただ見つめている。
とりは無言の圧力に耐え切れなくなり、考えがまとまりきらないまま口を開いた。

言葉で説明するよりも、実演した方が早いと判断したらしい。とりは自分ができる精一杯の笑顔をファイに見せた。……が、相手を威嚇しているようにしか見えない。

見本が見本なので、なかなかファイは笑顔を作ることができない。
いつの間にかムキになっているとりと２時間近く格闘しているうち、

奇跡的に笑顔と呼べる表情を作ることができた。

とりは心から喜んでいるようで、バッサバッサと翼を羽ばたかせている。その途中でハッと我に返り、いつの間にかファイのペースに飲まれていることに気がついた。
とりが動きを止め、前のように背を向けようとしたところで、ファイは黙って様子を見守るのを止め、言葉を口にする。

お礼を言われるとは考えてもいなかったとりは、嬉しいと感じていた。
しかし、とりは素直にその気持ちを言える性格ではなかった。

とりはぼやきつつも、気持ちを隠しきれずにそわそわとしている。

ファイは、人に笑えと言われないと笑わない、と覚えてしまっているようだ。
結局、とりがファイの認識を改めさせるまで、さらに１時間を消費した。




ファイは　笑顔を　習得した！
（自分で嬉しいと思っていると判断した時、笑えと言われた時のみ、笑顔になります）





【につき　はしめ】　ふあい
よおせいもしおおほえるためににつきをかきなさいといつたかくきようあつたことおかきなさいいわれた

きよおはとりえかおおおしえてもらつたうれしとおもつたえかおはうれしとおもつたのとわらえといわれたときにつかう

はんたのはんていとおわかれしたまたふわふわていつしよにねたい

につきはむつかしいもしのおてほんてのみてかいたようせいみててなおしつていうのするつていてた

きようおわり

じろりと睨む。
あどけない顔つき、敵意のない目を確認するとすぐに警戒を解く。

言い放って、さっさと背を向ける。
代わりに、さっき指をさされたエンブリオが声をかける。

ノームはさっと隠れてしまった。

ファイの足下を見つめ、少し不思議そうな顔をして、男は尋ねた。

なんだかのんびりした話し方の子だなあ、と思いながら。
紡がれる言葉に耳を傾け、なるほど、と合点がいったように頷く。

答えは既に目の前の少年が言ってしまっているのだが
余り難しい言葉を使うわけにも行かないし、どう説明したものかと逡巡する。

雪枝の周りで、くるくると回っていたリトルフェアリーが、
主人である雪枝の肩に乗り、楽しそうに微笑んでいる。

目の前の少年が、今の話を理解できていたか。
雪枝としてはかなり噛み砕いて説明したつもりだったが――

――わからないなら、聞いてみるのが一番早いのである。