その言葉を聞いたのは初めてではない。
一番初めは、どこで聞いたのだろうか。家で？領で？外で？
どこで聞いたにせよ、その言葉は切羽詰まった響きを伴って、険しい表情とともにいつも届けられる。
そのたびに慌ただしく自警団の者たちが出かけていき、怪我をして戻ってくる。
いや、いいや、知っている。何人か、戻ってこないこともあった。

よくあることではない。ないが、一度あればその光景は覚えてしまうもので、
その言葉を聞くたびに、言いようのない不安に襲われ、
その度に、家の誰かや、領の誰かに「大丈夫」と声をかけられた。

時がたつのを数えて待つ間、
こちらにも、あちらにも、手が届くことは一度もなかった。



――　一つ二つと音を紡ぎ、三つ四つと言葉を紡ぐ。　――

　見回り騎士といつもの広場、その背にマントを翻し
　とある少女と見回りの騎士、かごには一杯の花
　新米騎士と花売りの少女、お花はひとついかがですか
　民の少女と憧れの騎士、それじゃおひとつもらおうか
　日は昇って沈んでまた昇り、騎士はまた広場を通りがかる
　一日、十日、何日も、今日もまたマントを翻し

　見回り騎士といつもの広場、その背にマントを翻し
　とある少女と見回りの騎士、今日は小道で一休み
　新米騎士と花売りの少女、今日もご苦労様ですと
　民の少女と憧れの騎士、いつものようなあいさつで
　日は昇って沈んでまた昇り、少女は広場で待っている
　今日、明日、明後日も、見かけるだけで幸せなの

　見回り騎士といつもの広場、その背にマントを翻し
　いつもの今日も明日来る今日も、めぐり続いていく

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