俺のしたことが“あっている”のか“あっていない”のか─
正直わからなかった。
ひとつ言えるのは俺には恋愛というものはやっぱり向いてないんじゃないかと思う。
キスが女にとって大事だってことはアズと深雪の様子で分かったけど、大事だからキスひとつであーだこーだと一悶着が起こる。
「めんどくせぇな…」
ベッドに転がってため息を付いているとドアがノックされる。
「ユカラ、入るわよ。」
マグノリアの声だ。
ドアが開き畳まれた洗濯物を抱えて現れたマグノリアは俺の様子を見るとテーブルの上に洗濯物を置き俺のそばにやってきた。
「…なんだよ。」
「それはこちらの台詞よ?どうしたの、昼間からゴロゴロと。」
「ちょっと考え事。」
マグノリアは軽くため息を付いて俺の横に座る。
「ユカラ、深雪様と何かあったんでしょう。深雪様のご様子を見ていれば分かるのよ?」
「まぁ…なんかあったっちゃーあったっつーか…」
「んもう!歯切れが悪いわよ!」
ぷくっと頬を膨らませ俺の尻をパンと叩いてくる。
「何があったかは深雪様のぷらいばしーに関わることだから聞かないけど、ユカラがウジウジしてるのはまた別よ。ほら、しゃんとして。」
「分かったって。…おまえさぁ…俺と深雪達とで扱いの差ひどいんじゃない?」
ぱしぱしと叩き続けてくるので仕方なく起き上がりマグノリアと並んでベッドに座り言うとマグノリアは呆れたような顔をした。
「当たり前でしょう。ユカラは私の双子なのよ?私の半身だもの。他の人と同じ訳がないじゃない。」
自分の半身。
兄上をはじめとしてサクラさんやセツカさん、深雪とアズ、みんな大切な存在だと思って入るが、マグノリアだけは誰とも違う。
通常男女の双子は二卵性であるが、俺とマグノリアは非常に珍しい準一卵性の男女の双子だ。
ひとつの“たまご”から分かれた俺達はずっとお互いを自分の半身だと感じていた。
「…俺達が2人じゃなく1人で生まれてきたら、もっと上手く生きられたのかもな。」
「ユカラ、私達の欠陥は、私達が分かれたからじゃない…生きてきた環境のせいよ。」
俺達は幼少期から貴族の愛玩奴隷として生きてきた。
それぞれ違う貴族に買われたけど、開放された時期などが一致している。
双子の妙な因果を感じずにはいられなかった。
「マグノリアは…恋愛感情って分かる?」
俺が訊くとマグノリアは少し悩む。
「…私は、恋をしたことは無いわ。貴方と同じ、物語で恋心への知識を得ただけ。」
「頼りにならないな…。」
「ほんとね。」
俺とマグノリアは、顔を見合わせて苦笑いした。
「俺が深雪とアズの気持ちに応えようと思うと、不誠実が発生する。もう何もしない方がいいのかな。」
俺は再びベッドに寝転がり呟く。
マグノリアの手が伸び、俺の頭をなでた。
「ユカラの気持ちがどちらにも定まっていないんだから、行動を起こしてしまうと不誠実になってしまうわね…おふたりのこと、どう思っているの?」
「……………どっちの方が上とかは無い。大切だと思っているけど…この感情が友情か恋かは俺には分からない。」
「そう…」
マグノリアが立ち上がり俺のテーブルの上に置いていある本を手に取る。
マグノリアから借りて読む予定の小説だ。
「この小説の主人公ね、ユカラに少し似てるのよ。子供の頃に愛を貰えず、感情が麻痺してて…恋をしたことも無いの。でもヒロインに出会って、心の氷が溶けていくの。ユカラが感情の整理をする助けになるといいわね。」
そう言い俺の横に置く。
「他にもしないといけないことが残ってるの。私はもう行くわね。」
「うん…あのさ…」
ドアの前に立ったマグノリアが振り向く。
「…………」
ありがとう
そう言いたいだけなのに何故か言いよどんでしまう。
他の人には簡単に言えるのに。
するとマグノリアは俺の気持ちを察したかのように微笑む。
「どういたしまして。」
そしてドアをあけ出ていった。

[822 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[375 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[396 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[117 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
[185 / 500] ―― 《大通り》より堅固な戦型
―― Cross+Roseに映し出される。
アンドリュウ
紫の瞳、金髪ドレッドヘア。
体格の良い気さくなお兄さん。
料理好き、エプロン姿が何か似合っている。
ロジエッタ
水色の瞳、菫色の長髪。
大人しそうな小さな女の子。
黒いドレスを身につけ、男の子の人形を大事そうに抱えている。
エディアン
プラチナブロンドヘアに紫の瞳。
緑のタートルネックにジーンズ。眼鏡をかけている。
長い髪は適当なところで雑に結んである。
白南海
黒い短髪に切れ長の目、青い瞳。
白スーツに黒Yシャツを襟を立てて着ている。
青色レンズの色付き眼鏡をしている。
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アンドリュウ 「ヘーイ!皆さんオゲンキですかー!!」 |
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ロジエッタ 「チャット・・・・・できた。・・・ん、あれ・・・?」 |
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エディアン 「あらあら賑やかですねぇ!!」 |
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白南海 「・・・ンだこりゃ。既に退室してぇんだが、おい。」 |
チャット画面に映る、4人の姿。
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ロジエッタ 「ぁ・・・ぅ・・・・・初めまして。」 |
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アンドリュウ 「はーじめまして!!アンドウリュウいいまーすっ!!」 |
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エディアン 「はーじめまして!エディアンカーグいいまーすっ!!」 |
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白南海 「ロストのおふたりですか。いきなり何用です?」 |
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アンドリュウ 「用・・・用・・・・・そうですねー・・・」 |
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アンドリュウ 「・・・特にないでーす!!」 |
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ロジエッタ 「私も別に・・・・・ ・・・ ・・・暇だったから。」 |
少しの間、無音となる。
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エディアン 「えぇえぇ!暇ですよねー!!いいんですよーそれでー。」 |
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ロジエッタ 「・・・・・なんか、いい匂いする。」 |
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エディアン 「ん・・・?そういえばほんのりと甘い香りがしますねぇ。」 |
くんくんと匂いを嗅ぐふたり。
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アンドリュウ 「それはわたくしでございますなぁ! さっきまで少しCookingしていたのです!」 |
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エディアン 「・・・!!もしかして甘いものですかーっ!!?」 |
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アンドリュウ 「Yes!ほおぼねとろけるスイーツ!!」 |
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ロジエッタ 「貴方が・・・?美味しく作れるのかしら。」 |
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アンドリュウ 「自信はございまーす!お店、出したいくらいですよー?」 |
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ロジエッタ 「プロじゃないのね・・・素人の作るものなんて自己満足レベルでしょう?」 |
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アンドリュウ 「ムムム・・・・・厳しいおじょーさん。」 |
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アンドリュウ 「でしたら勝負でーすっ!! わたくしのスイーツ、食べ残せるものなら食べ残してごらんなさーい!」 |
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エディアン 「・・・・・!!」 |
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エディアン 「た、確かに疑わしい!素人ですものね!!!! それは私も審査しますよぉー!!・・・審査しないとですよッ!!」 |
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アンドリュウ 「かかってこいでーす! ・・・ともあれ材料集まんないとでーすねー!!」 |
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ロジエッタ 「大した自信ですね。私の舌を満足させるのは難しいですわよ。 何せ私の家で出されるデザートといえば――」 |
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エディアン 「皆さん急務ですよこれは!急務ですッ!! ハザマはスイーツ提供がやたらと期待できちゃいますねぇ!!」 |
3人の様子を遠目に眺める白南海。
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白南海 「まぁ甘いもんの話ばっか、飽きないっすねぇ。 ・・・そもそも毎時強制のわりに、案内することなんてそんな無ぇっつぅ・・・な。」 |
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白南海 「・・・・・物騒な情報はノーセンキューですがね。ほんと。」 |
チャットが閉じられる――