まだ少し肌寒い風が耳飾りの房を揺らす。
着始めて間もない制服は、固くて、肩が余って、とにかく着心地が悪い。


「おはよう。」


朝、鏡の前で紅く塗った目尻。
それと共に黒目を細め、努めてにこやかに教室に足を踏み入れる。
そうして、小学校の時と大して変わらない顔ぶれに、舐めるような視線を送ってみると。

連中の反応は思っていたとおり。
皆一様に目を丸くするばかりで、おれが席に着いた後も返事は返ってこなかった。

入学式のときはこんなんちゃうかったもんな。
そらびっくりするわ。





…ふふ。

変な顔。

豆鉄砲食らったすずめみたい。


















中学生になったその翌朝。
色という色が体から抜け落ちていたあの朝。
鏡の前の自分も同じような顔だったことを棚に上げて
教科書の影でこそりと口端を持ち上げた。

▲	――数分後

	七坂 「俺の心配をしてくれ！」 草まみれの七坂が出てきた。 「マンモスの泣き声は……ヴゴオオオって感じだったぜ。」

	七坂 「まっ、アレだけのぞうが通ったんだ。 　もう出会うことｍ」

	映像が途切れるその瞬間映ったものは―― 真横に高速でスライドする七坂と 七坂の側面に刺さるぞうであった――

▲	いちま 「誰の肩幅が広すぎるって？？？」 　 いちま 「Ｗホクロには肩ぶつけてやるじゃんね。 　ぶつけるだけで押してないから実質0円～～！」 いちま 「まーお互いばったり会っても攻撃しないように、 　ってトコはあたしも賛成だけどさ。 　てかさ、会った時にちゃんと塩ボってわかる感じ？ 　アンジ側みたいに姿が違うとかないじゃんね…？」

▲	間近に迫る白い顔と、頬に添えられた手に込められる力に、 僅かに表情が歪む。何故だろう、身体が萎縮して震える。 警告を発するように。 それは今までハザマでの彼に感じ続けていた"違和感"によるものなのだろうか。

	彼から返ってきたのは望んだ答えだった。 否定の世界に負けたら、その時は一緒にいて欲しいとそう告げて。 返ってきたのは、どうあろうと自分の隣にいるつもりだと、 これ以上なく幸福な答えだった。 そのはずだった。なのに。 上手く言葉が出てこなくて、ひゅ、と空気の抜ける音が喉の奥で鳴る。 頬を押さえつける手に自分の手を重ねて、カラカラに乾いた口を何とか開く。

	見慣れたはずの、見慣れない黒い瞳を見上げる。 「………ささべ……？」 ……これは、呼びかけではない。 自分が考えていることは、懸念していることは杞憂かもしれない。 いや、そうであってほしいと願っているのに。 いっそ問いかけることなど辞めてしまえばいいのに。

	その表情も、言葉も、話すそぶりも。 違う。違う　ちがう　ちがう。 杞憂であってほしい、ただ自分の勘違いであってほしい。 そう願いながら。 「………お前…、本当に雀部か…？」 震える声で問いかける。その黒い瞳に。

▲	ハルモニア 「あら、随分とあっさりしていますのね。 薄情なのかあの子にそこまで興味がないのか……。 大切な友達、という言葉もどうも薄っぺらく感じますわね」

	つかみどころがない人間であることは知っている。 わざと本心を悟られないように飄々としているのも。 黒宮翡翠にはそういう人だと記憶されているから。 だから彼の反応に大した驚きはない。人間は薄情だ、そのことは己が良く知っている。

	ハルモニア 「信用できない。…そうですか、そうですか。 ふふ、構いませんとも。人間に信用されるなど寒気が致しますわ。 しかし――目的、ですか」

	その問いにはわずかに迷いを見せ――

	ハルモニア 「わたくしの目的はひとつ。元の世界へ戻り復讐すること。 己を陥れた同族と、生意気に火刑に処そうとした人間たちに。 そのためにはイバラシティが必要なのですわ。 あそこの環境は素晴らしいもの。 ですから、わたくしは侵略側に回りたいのです」

	ハルモニア 「ですが、前述のとおりそうはいかない事情もある。 なので表向き防衛に回るフリをしている必要があるのですわ。 その証拠に……わたくし、実際の戦闘では木偶の坊ですもの。 全く手を貸しませんの。だってわたくしは本来侵略する側ですから」

	ハルモニア 「侵略を望むあなたに手を貸すと申したのもこういうことですわ。 利害は一致していますが――さて、どうします？」

▲	あなたのCross+Roseに着信の通知が届く。 表示されている名前は白槻 一葉……なのだが。

	??? 「貴方がイツハの言ってたふしだらな先輩！？ 可愛いイツハにどんな卑猥な話をしたの……！？」 何やらすごい剣幕でつっかかってきている。 その姿はあなたの知るイツハの声姿そのままで。 違いをあげるとすれば、服装と喋り方……そして瞳の色くらいのものだろう。

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秘密結社フリーパーソン ENo.606 雀部 ENo.607 我孫子

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ヒノデ区 B-16：チェックポイント《白い岬》

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立ちはだかるもの 守護者《NARWHAL》A 守護者《NARWHAL》B

ヒノデ区 B-16：チェックポイント《白い岬》

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222

414

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641

343