
ケネス君が、イバラシティに来ている
ケネス君と初めて会ったのは昨年末、一旦実家に帰った時の事
綺麗な顔をしている人だと思った
一生懸命、悲しい事とか辛い事を我慢している人だと思った
「先生」が養子にとった人だ、と聞いて。やっぱり何かあるのだと思った
明るくて、優しい人だけれど。時々、人形のような、機械のような、そんな様子を見せる
俺は、手を差し伸べられるだろうか
ケネス君のような人を、救うことができるだろうか
姉さんなら、きっと手を差し伸べて、あの心を救うことができるんだろう
俺でも、それが出来るだろうか
手を差し伸べることが出来るかどうか、わからない
ケネス君の心を救えるかどうかわからない
ただ、我儘を言うなら
ケネス君と、友達になれたらいい、と思う
ほんの少しでも、支えることが出来ればいい、と思う
まだ、ケネス君の事で、知らない事がたくさん、たくさんあるけれど
少しずつ、少しずつでも知っていって、救いたい
ケネス君に俺が救われたように、俺も助けられたらいい
ケネス・ブラックマン・アーキナイト
ヴィットリオからその名前を聞いて、初めてその存在を認識した
アハルディア・アーキナイトに息子など存在していなかったはずだと怪訝に思えば、やはり養子であると言う
あの男が養子にとるなど、厄ネタの固まりに違いないのだろう
だが、同時に思う
アハルディアが自身と同じ家名を名乗ることを許し、そこまで深く懐に入れる、と言うことは
それほどまでに、そのケネス・ブラックマン・アーキナイトと言う少年は「切り札」足り得るのではないか、と
俺でもそのように考えたのだ、同じ考えに至る奴は多いだろう
アハルディア・アーキナイトという男を警戒している連中から見れば、要注意人物たる存在になる
……そう考えると、在る種哀れな子供と言える
あの男は、責任を取り切れるつもりなのだろうか
ケネス君については、俺も詳しくは聞かされていない
「故あってアーキナイトが引き取った」と言う事実と、「昨年11月の事件で酷く心が傷ついた」と言う2点。そこは把握している
キャストライトが言っていた様子からすると、アーキナイトが連れてきた時点で、かなり精神的に追い詰められた状態だったらしい
それが、よくなってきたところで11月のあの事件だと言うから、酷く不運だ
年末年始、俺達が顔を合わせた時はあれでもだいぶ良くなっていたらしい
あの事件では、グリムワールも酷く傷ついていた様子だった
多分、あいつはそれを認めないと思うけれど。あいつは彼女のことが好きだったんだろう
いや、好きとは少し違うかもしれない
愛情か、憎悪か。もしくはそれら二つが混ざりあったものか
とにかく、グリムワールは彼女に、夢咲 零羅という女性に、そんな酷く複雑な感情を抱いていたから
アーキナイトだって、表には出そうとしないけれど、彼女が死んだことについては思う処ある様子だった
彼女にかかっていた呪いの関係上、どうしても冷たく接しなければならなかったから、その点についても
在る種、彼女は優しかった
でも同時に、残酷だったのだろう
振りまくだけ振りまいて、結果はこれなのだから
ケネス君も、グリムワールも、アーキナイトも
あの事件を、彼女の件を、乗り越えられればいいのだけれど

[770 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[336 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[145 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[31 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
―― Cross+Roseに映し出される。
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白南海 「うんうん、順調じゃねーっすか。 あとやっぱうるせーのは居ねぇほうが断然いいっすね。」 |
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白南海 「いいから早くこれ終わって若に会いたいっすねぇまったく。 もう世界がどうなろうと一緒に歩んでいきやしょうワカァァ――」 |
カオリ
黒髪のサイドテールに赤い瞳、橙色の着物の少女。
カグハと瓜二つの顔をしている。
カグハ
黒髪のサイドテールに赤い瞳、桃色の着物の少女。
カオリと瓜二つの顔をしている。
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カグハ 「・・・わ、変なひとだ。」 |
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カオリ 「ちぃーっす!!」 |
チャット画面に映し出されるふたり。
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白南海 「――ん、んんッ・・・・・ ・・・なんすか。 お前らは・・・あぁ、梅楽園の団子むすめっこか。」 |
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カオリ 「チャットにいたからお邪魔してみようかなって!ごあいさつ!!」 |
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カグハ 「ちぃーっす。」 |
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白南海 「勝手に人の部屋に入るもんじゃねぇぞ、ガキンチョ。」 |
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カオリ 「勝手って、みんなに発信してるじゃんこのチャット。」 |
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カグハ 「・・・寂しがりや?」 |
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白南海 「・・・そ、操作ミスってたのか。クソ。・・・クソ。」 |
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白南海 「そういや、お前らは・・・・・ロストじゃねぇんよなぁ?」 |
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カグハ 「違うよー。」 |
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カオリ 「私はイバラシティ生まれのイバラシティ育ち!」 |
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白南海 「・・・・・は?なんだこっち側かよ。 だったらアンジニティ側に団子渡すなっての。イバラシティがどうなってもいいのか?」 |
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カオリ 「あ、・・・・・んー、・・・それがそれが。カグハちゃんは、アンジニティ側なの。」 |
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カグハ 「・・・・・」 |
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白南海 「なんだそりゃ。ガキのくせに、破滅願望でもあんのか?」 |
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カグハ 「・・・・・その・・・」 |
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カオリ 「うーあーやめやめ!帰ろうカグハちゃん!!」 |
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カオリ 「とにかく私たちは能力を使ってお団子を作ることにしたの! ロストのことは偶然そうなっただけだしっ!!」 |
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カグハ 「・・・カオリちゃん、やっぱり私――」 |
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カオリ 「そ、それじゃーね!バイビーン!!」 |
チャットから消えるふたり。
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白南海 「・・・・・ま、別にいいんすけどね。事情はそれぞれ、あるわな。」 |
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白南海 「でも何も、あんな子供を巻き込むことぁねぇだろ。なぁ主催者さんよ・・・」 |
チャットが閉じられる――