今日手からカラアゲがでた。
このあいだ
ながれぼしにおねがいしたら
かあちゃんを生きかえらせてほしいって言ったのに
おれのおねがいきいてくれませんでした。
でもいいです。
カラアゲはかあちゃんの作ってくれたやつだし
とおちゃんもすきだからです。
とおちゃんはおさけのんで
おこったりないたりしてるけど
もしかしたら元どおりになるかもしれない
れいぞうこにいれたの1こしかないから
だからいとうくんにもあげたいけど
とおちゃんにカラアゲをあげようとおもいます
……小さいガキの頃の記憶。
植物園での事件の影響か、おふくろの幽霊との別れを済ませたせいか
それともハザマでアイツが付けて来てやがるせいか。
こっそり岬が伊藤君の弁当と一緒に作ってくれたバーガーを齧る。
伊藤君もイーサンもはぐれちまったみてェだし気分は最悪だ。
…辺見は無事だったけど。あとで伊藤君の安否を確かめねェとな。
俺が異能に初めて目覚めた時、それを正直に話したらアイツは俺を殴りやがった。
「くだらねェ冗談で呼ぶな」だの「どこで盗ってきた」だの「馬鹿」だの
感謝の言葉も心配する様子も一言もなかった。
いつも通り酒臭い息で罵声を浴びせてきて勝手に泣いて
その後はなにもなかった。
…バーガーがちょっとしょっぱくなってきたな。岬がせっかく作ってくれたのに。
最初から期待はして無かったけどな。俺はあの時ほんの少しだけ
ほんの少しだけで良いから
昔みたいにアンタに笑って欲しかったンだよ。
今のアンタが自分の保身以外の何を考えてンのか後付けて邪魔するくらいなら俺に教えてくれ。
酔いが覚めかけ混濁した俺の記憶に追い討ちをかけるように過去の出来事が雪崩れ込んでくる。
“とーちゃん…唐揚げ出た”
“…はァ?”
”手から、唐揚げ出た“
おずおずと切り出す息子の怯えた顔。
何をそんなに怖がっているのか不愉快だった。
もし俺がこの街で生まれ育ち異能と何ら関係のない生活を送っていたとしたら
それは気を引きたいがための嘘だと一蹴出来ただろう。
しかし、こいつは俺の血を引いている
異能の街イバラシティで生まれ育ち、異能を持つ父と母の間に生まれた
「無能者」である俺の血を引いている。
隔世遺伝する異能もあるのかもしれない。
何の異能かは知れないが、唐揚げ一個再現するだけの異能なんてものがあるとしたら
まだ間に合うかも知れない。
”……それだけか?馬鹿な冗談言いやがって“
”かーちゃんの…だよ…“
”くだらねェ冗談のために話しかけンなつッてンだよ“
勘違いだったということにすればまだ普通に日常を送らせられる。
ただでさえ異分子が排除される世の中だっていうのに、
ただでさえ哀れな生活破綻者の息子だっていうのに、
異能なんて概念が知れ渡っていないこの街で生活するにはこいつの能力は障害でしかない。
だからここで二度と異能を発動させなければ、それをないことに出来る。
それ以上に「まともだった日常の破片」をもう見たくなかった。
異能の街へこいつを連れて行かれたくなかった。
”どこで盗ってきた“
”……“
“この唐揚げはどこから盗んできたかッて聞いてンだよ!!!”
気づけば
手が
上がっていた

[770 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[336 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[145 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[31 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
―― Cross+Roseに映し出される。
 |
白南海 「うんうん、順調じゃねーっすか。 あとやっぱうるせーのは居ねぇほうが断然いいっすね。」 |
 |
白南海 「いいから早くこれ終わって若に会いたいっすねぇまったく。 もう世界がどうなろうと一緒に歩んでいきやしょうワカァァ――」 |
カオリ
黒髪のサイドテールに赤い瞳、橙色の着物の少女。
カグハと瓜二つの顔をしている。
カグハ
黒髪のサイドテールに赤い瞳、桃色の着物の少女。
カオリと瓜二つの顔をしている。
 |
カグハ 「・・・わ、変なひとだ。」 |
 |
カオリ 「ちぃーっす!!」 |
チャット画面に映し出されるふたり。
 |
白南海 「――ん、んんッ・・・・・ ・・・なんすか。 お前らは・・・あぁ、梅楽園の団子むすめっこか。」 |
 |
カオリ 「チャットにいたからお邪魔してみようかなって!ごあいさつ!!」 |
 |
カグハ 「ちぃーっす。」 |
 |
白南海 「勝手に人の部屋に入るもんじゃねぇぞ、ガキンチョ。」 |
 |
カオリ 「勝手って、みんなに発信してるじゃんこのチャット。」 |
 |
カグハ 「・・・寂しがりや?」 |
 |
白南海 「・・・そ、操作ミスってたのか。クソ。・・・クソ。」 |
 |
白南海 「そういや、お前らは・・・・・ロストじゃねぇんよなぁ?」 |
 |
カグハ 「違うよー。」 |
 |
カオリ 「私はイバラシティ生まれのイバラシティ育ち!」 |
 |
白南海 「・・・・・は?なんだこっち側かよ。 だったらアンジニティ側に団子渡すなっての。イバラシティがどうなってもいいのか?」 |
 |
カオリ 「あ、・・・・・んー、・・・それがそれが。カグハちゃんは、アンジニティ側なの。」 |
 |
カグハ 「・・・・・」 |
 |
白南海 「なんだそりゃ。ガキのくせに、破滅願望でもあんのか?」 |
 |
カグハ 「・・・・・その・・・」 |
 |
カオリ 「うーあーやめやめ!帰ろうカグハちゃん!!」 |
 |
カオリ 「とにかく私たちは能力を使ってお団子を作ることにしたの! ロストのことは偶然そうなっただけだしっ!!」 |
 |
カグハ 「・・・カオリちゃん、やっぱり私――」 |
 |
カオリ 「そ、それじゃーね!バイビーン!!」 |
チャットから消えるふたり。
 |
白南海 「・・・・・ま、別にいいんすけどね。事情はそれぞれ、あるわな。」 |
 |
白南海 「でも何も、あんな子供を巻き込むことぁねぇだろ。なぁ主催者さんよ・・・」 |
チャットが閉じられる――