
「――どうして――!」
女は駆ける。
月の光も、星の光もない中、
何かに追われるように、
その瞳の紅の瞳の光をたなびかせながら、
地を駆ける。
「――どうしてこんな事に――ッ!」
地を駆ける女は、
全ての感情を吐き出すように、
何度も何度も同じ言葉を繰り返し続ける。
いつもと変わらぬ日常、
いつもと変わらぬ日課。
何も変わる事などないが故に、
問題など何もないはずなのに、
現実はこの通り、
いつもと違う出来事が。
それも彼女の手におえない出来事が起きるだなんて、
予想だに出来る訳がなかったのである。
始まりは、そう――
「そこまでだ。」
日課ともいえる夜中徘徊。
もとい、パトロールである。
吸血鬼というものは夜と相性が良く、
女性の危険というものは夜には特に多い。
一人歩きする若い女性は格好のターゲットになりやすいからだ。
無論、いつも何かがあるわけではない、
そういう時はのんびり散歩を楽しんで帰るだけである。
そして今日はたまたま事件に遭遇した……という訳だ。
幸か不幸か……
といえば、女にとっては幸運だろう。
襲われているのは女性なのだから。
女は女性が大好きだ。
男よりも女好き。
それが――社 映美莉という女である。
「そこまでだ!」
制止の声から制圧にさして時間はかからない。
不利と判断すれば大体の奴は逃げる。
そして、彼女の事を知っていればなおさらだろう。
蜘蛛の子を散らすように、
男達は逃げていく。
そして、残されたのは襲われていたうら若き乙女。
いつものように、声をかけ、
ナンパしようとしたところで――
「……うん?」
声が聞こえる。
ここより少し遠くにある場所。
声に聞き覚えは……ある。
葵の声だ。
小さな悲鳴のようなもの。
目の前の金の髪の乙女をこのまま……
といきたかったが、そうはいかない。
その悲鳴が女の子であれば、
誰であれ助けに行くのが映美莉という女だ。
さらにそれが親しい女性となれば猶更……
というものである。
ならばどうするかというと……
「おっと、済まない、レディ。
ゆるりと安全な場所まで一緒して、
お茶でもと思ったが、
どうやら今夜は我の助けを待つものがほかにもいるらしい。
明るい道まではお送りするから、
その後は気を付けて帰ってくれないだろうか?」
緩やかに礼をして、返事を待たずにお姫様抱っこで、
女性を明るく人通りのある道で降ろした所で、
颯爽と悲鳴のあった場所へと駆ける映美莉。
引っ張られていきそうになっているが、
必死に抵抗する葵の様子をみて、
成長したなぁ、
なんてどうでもいい感想を多少抱きつつも、
「またせて済まないね。
葵。
こんな夜更けに出歩くなんて何かあったのかな?
とりあえず、嫌がっているんだ。
彼女の手を離して貰おうか。」
そっと、
彼女の手をつかむ男の腕をつかむ。
思わぬ力と痛みにひるみ、
葵から男が手を離した所で投げ飛ばすと、
男はこちらをにらみ返すも、
魔眼をもって、
恐怖を与え反抗の意思をくじき――
男は、すぐさま逃げ出した。
「やれやれ。
大丈夫だったかい?
葵。
それはいいけど、またなんでこんなところに。」
これで安全は確保できたなと、
一つ息を吐いて葵に向き直る。
これで一安心と思った所で、
ふと疑問に思ったからである。
以前襲われてからは、
そういう道を通らないように気を付けていたはずだと思っていたのに、
どうしてこんな所で出会ったのだろう?
と。
「あ、それは、えーと……
その……」
言いにくい事なのだろうか?
言い淀んだのを見て、
小首をかしげる。
心無しか葵の顔が紅潮しているようにもみえるが、
薄暗い為、
気のせいかもしれない。
「……」
しかし、答えないというのであれば、
映美莉としてはただだまりこくるしかなく、
じっと黙って見つめ続ける。
沈黙と、まっすぐ見つめられる視線に、
堪え切れなくなったのか、
葵は視線を逸らそうと、
目が泳いでいき――
やがて諦めたのか、
「分かりました!分かりましたから!」
といって、
慌てたように話し始めた。
「その、
本当はこっちの方にくるつもりはなかったのですが……
ちょうどこちらの方に入っていく映美莉を見かけて、
声をかけようと思ったら少し行ったところで姿を見失ってしまって、
迷っているうちに、
声をかけられて、断ったのですけど……
しつこくて、
手をつかもうとしてきたので、
悲鳴をあげて、抵抗していたのですが、
捕まってしまった時に映美莉が助けてくれて本当に助かりました。」
まさか、いつもの散策で、
ここに来るのを見られているとは思わなかった。
いや、別にみられてもいいのだけど、
見られた事が仇となるとは思わなかった映美莉は、
次からは気を付けようと、
心に誓いながら、
「なるほど、
我がいつものように夜のパトロールをするところを見られていたか、
しかし、危ないぞ。
いくら我が近くにいるとわかっていたとしても、
気づいてなければどうにもならぬ故な。
しかし、それならそうと、
携帯で一報くらい入れてくれればよいものを。
例えば……
そう!
メールとかな!」
そう、いくら声をかけられなくても、
知り合いなのだから、
連絡をる取る方法は複数ある。
遠慮せずにメールなんなりすればいいのだと、
どや顔で答える映美莉に対し、
どこかちょっと呆れた顔になって、
溜息を一つ吐く葵。
そう。
映美莉は気づいていない。
いつだってそうだ。
それに気づくのはいつだって、
致命的に遅い状況なのだ。
今回の場合は……
「映美莉…携帯忘れたでしょ。
メールもコールもしたけど反応無くて……
これ、完全に携帯を忘れてると思ったから、
追いかけたのだけど……」
携帯を忘れたというシンプルなものである。
その答えに、
えっ?
と首をかしげる映美莉。
その後、
自分の持ち物確認をし、
ない、ここにもないといいながら、
くまなく探し……
「携帯……忘れた……!
馬鹿な、いったいどうして……!
学校に行くときも、
学校から家に帰る時も確認したし、
きちんと充電も……!」
いつどこで忘れたかもあからさまに明白だった。
結局の所、
家にかえって、夜の見回りに出る時に、
普通に忘れてきたのである。
この映美莉という女。
このように物忘れするのは日常的で、
今に始まった話ではない。
今回は携帯だが、
ハンカチや財布、
学生証……
どころか何も持たずに大学に来て、
授業が始まってから忘れたことに気づくなどという事まである始末。
彼女となんらかの関りを持った人間ならばよく知られている事実である。
「……馬鹿な、
携帯を忘れただと!?
いつ、どこで!?」
そして、映美莉はどこで忘れたのかまでは気づかない。
当然といえば当然の話なのだが……
だからこそ
この忘れ癖は治らないし、
いくら指摘しても徒労に終わるだろう。
そう。
彼女は本気なのだ。
本気でこれをいっているのである。
慣れてはいてもなんだかおかしくなってしまって、
思わず吹き出す葵。
「……映美莉。
携帯そのまま充電しっぱなしなのでは……?」
そして至極真っ当な指摘をする。
その指摘に対し、
愕然とした表情を浮かべる映美莉。
その発想はなかったとでもいいたげな映美莉は、
「……そういえばそうだったぁぁぁぁぁぁぁ!
くっ、
まさか充電したまま忘れるとは、
すまない、
それでは連絡を取るのは無理だな!
迷惑をかけた。
すまない。
……と、こんな所で話こんでいるのもなんだな。
もうちょっと人気のある場所にいこう。
このままここにいるのは危険だ。」
そして、ひとしきり叫ぶと、
正気にかえって、
ここにいる事のまずさに気づき、
速やかに葵の手を引いて移動しようとする。
その動きと発言で、
映美莉が冷静になった事に気づくと、
葵の方も表情を引き締め、
しっかりと映美莉の手を握り返し、
後をついて歩き始める。
ほどなくして、人気の多い通りへと出てくる。
後はもう別れて帰っても良し、
このまま一緒に遊びにいくのもよし。
さて、どうするか。
少なくとも散策はこれ以上は良いだろうと映美莉が口を開き、
葵に問いかけようとした瞬間、
ふいに葵の手を握る方とは逆側から、
何かが抱き着くような衝撃と、
やわらかな感触が襲ってくる。
何が起こったのか見てみると、
金髪の女性がきらきらと目を輝かせながら、
こちらを見上げ、
口を開いた。
「先ほどは助けてくれてありがとうございます!
またきっと会えるのではないかと思って、
ずーっと待っておりましたのよ!
それで、
どこに行きますか!
助けてくれたお礼をしたいんですの!
お茶でもといってくださいましたよね!
どうやら無事貴女の用事も終わったみたいですし?」
そして、口から放たれた言葉。
うん。
何も間違っていない。
助けたのは映美莉であり、
お茶を誘おうとしたのも映美莉。
普段であれば喜ぶし、
別の機会であればそれはそれでよかっただろう。
しかし、今は……
映美莉が葵の方を見る前に、
ふいに葵が握る映美莉の手に痛みが走る。
そーっと、
映美莉が葵の方を見ると……
葵が力いっぱい自分の手を握りしめながら、
ニッコリ笑顔で映美莉を見上げる。
正直いって少し……
否、大分怖い。
どうして怖いのかは分からない。
異様な圧力めいたものを感じる。
「……私が襲われていた間、
大分お楽しみだったみたいですね?
それでどうするんです?
私を置いて彼女と楽しみますか?
ふふ?
残念ですね?
この後ゆっくり遊んでくれると思っていたのに。」
そして告げられた言葉。
このタイミングで映美莉は現在の状況に気づく。
葵の視線が自分から少し奥へとずれる。
そして、
葵の発言と共に金髪の女性が映美莉の腕をつかむ力が強くなっていく。
ちらっと葵から視線を外し、
金髪の女性の方をみると、
葵の方をみている。
まるで、二人の視線が絡み合って火花を散らすような錯覚。
映美莉はこの状況を知っている。
修羅場とよばれるその状況を。
普段なら、
なんてかなだめすかしてどうにかする訳だが……
というより、
そもそもこんな状況になる事自体初めてな事である。
どこで何を間違ったかといわれると、
特に間違ったことをしていない為、
映美莉には二の句すら告ぐ事ができず、
状況に身を任せるがままにするしかない。
たとえ、
掴まれている腕と手がだんだんと痛くなってきたとしても。
「あら、この方は助けてくれた私を誘って下さったんですよ。
初めて出会ったというのにそれは情熱的に。
優しい方ですから、用事を終えたのですから、
きっと私と一緒にお茶をしていただけますわ。」
「いえいえ、映美莉さんは優しいですから、
助けた人のケアの為にいってくれたのであって、
親しい私を放置するなんてありえません。
ですので、
今日の所は私が映美莉と遊びます。
引いてくださいますよね。」
みしり、
という音が映美莉の手と腕からしたような錯覚に、
映美莉はこれはまずい奴だと速攻で判断する。
事実、二人とも笑顔のまま譲る様子は全くない。
この状況かで出来る事というと……
たった一つ。
しかし、このたった一つは不本意ではあるが……
ここに至っては仕方ないだろう。
体を霧化させて、
二人から離れ――
「――二人と遊ぶのは楽しく光栄な事であるが、
どうやら、二人とも頭に血がのぼっているようだ。
今宵はこれで失礼させていただくよ、
また、いずれの機会にでも一緒に遊ぼう。
それじゃ…
寄り道せずに帰るんだよ。」
最後の手段を使う。
言葉をおいて一目散に逃げだす。
どうしてこうなった。
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えみりん 「本日の日記は……解散!」 |
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えみりん 「ネタがない!」 |
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えみりん 「本当にネタがない、何か思いつくと思ったがそんなことはなかった」 |
 |
えみりん 「ネタ募集したみ……」 |
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えみりん 「故に、日記は書かない事に……」 |
 |
えみりん 「え、ダメェ……?」 |
 |
えみりん 「そんなァ……」 |
玉護(276) から
ボロ布 を受け取りました。
解析LV を
5 UP!(LV15⇒
20、-5CP)
付加LV を
5 UP!(LV20⇒
25、-5CP)
兎乃(223) により
ItemNo.11 ネジ から射程3の武器『
ばーるのようなもの?』を作製してもらいました!
⇒ ばーるのようなもの?/武器:強さ75/[効果1]貫撃10 [効果2]- [効果3]-【射程3】
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兎乃 「はい、出来たわよ~えみり。何かすごい原始的な武器って感じだけど、あはは…」 |
狐疑(263) により
ItemNo.6 ド根性雑草 から防具『
漆黒のマント』を作製してもらいました!
⇒ 漆黒のマント/防具:強さ60/[効果1]反護10 [効果2]- [効果3]-
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葛子 「これなる衣を着るものが、いついかなる時でも気高さと力を忘れぬよう。 天羽槌雄神よ、御守りくだされ。」 |
玉護(276) の持つ ItemNo.11 に ItemNo.8 不思議な石 を付加しようとしましたが、付加材料を見失ってしまいました。
ディスオーダー を研究しました!(深度0⇒
1)
ディスオーダー を研究しました!(深度1⇒
2)
ディスオーダー を研究しました!(深度2⇒
3)
ウィークサーチ を習得!
☆機知奇策 を習得!
☆初習得ボーナス:各FPが2増加した!
◇通常獲得:各CP・FPが5増加した!