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. 「―では、これよりインタビューをさせていただきます。」 |
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. 「―医療の奇跡と呼ばれた今回の件、ご両親はどう思われましたか。」 |
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母親 「とにかく感謝でいっぱいです。奇跡を起こしていただいた、お医者さんの先生方、看護師さん・・・」 |
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母親 「なにより、頑張ってくれた娘に・・・本当に、心の底から感謝しています。」 |
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母親 「事故の知らせがあったときは血の気が引きました。この子が死んだら、きっと私も生きていけないでしょう。」 |
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父親 「ええ、妻もそうでしたが私も頭が真っ白でしたね。」 |
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父親 「愛する一人娘ですから。失う恐怖に、きっと私も耐えられないでしょう。」 |
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. 「―ありがとうございます。素晴らしき家族愛ですね。」 |
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. 「―では、お嬢さんにもお話をお伺いしましょう。」 |
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. 「―今回の事故、大変でしたね。」 |
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■■■ 「ありがとうございます。でも、今は大分元気になりましたよ。」 |
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. 「―事故のことはおぼえていますか?」 |
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■■■ 「あまり覚えてないんです。気が付いたらベットの上でした。」 |
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. 「―退院したら何がしたいですか?」 |
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■■■ 「両親に恩返しがしたいです。たくさん心配かけちゃいましたから。」 |
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【4戒目】
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リョウ 「えっと、次は、チョコをとかして・・・」 |
今日は2月13日。
明日はそう、バレンタインです。
一年で一番甘く、ロマンチックな日。
あいにく私は特定の方にお渡しする予定はありませんが・・・・
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リョウ 「マシュマロを、少し炙って・・・・」 |
でも、渡したい相手はいます。
たくさん、います。
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リョウ 「喜んでくれると、うれしいな・・・」 |
優しいみんなに、あったかいみんなに、私を、見つけてくれた、あの人たちに―
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―お、おいしい…っと、お礼しないと。
―……あとでお礼の手紙だして置かなきゃ
―え、ええ子や…ありがとうリョウちゃん…
―リョウ……すげえなあ……。うん、美味いよ
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リョウ 「わぁ、嬉しい!ありがとうございます!」 |
―おお、リョウからもチョコ!!サンキューな。
―リョウちゃん可愛すぎてウケるわ。食べんのもったいないんだけどこれ!
―やったっす!ありがとーございますっす!!
―とても美味しかったぜッ!! 誰だか知らないけどありがとうッ!
―マシュマロチョコ美味かったぞ。一ヶ月後にお返しはさせてもらうが礼として俺んちのねこを好きに撫ででよい
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リョウ 「えへ、えへへ・・・ありがとうございます・・・」 |
みんな、喜んでくれました。
嬉しい、嬉しいな。本当に、本当に。
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リョウ 「あ、そうだ、保健室、保健室にも・・・!」 |
色々お世話になった先生にも、感謝をこめて。
きっと誰からなんてわからないでしょうけど、それでも―
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リョウ 「失礼しま――あれ?」 |
保健室に入って感じる、いつもと違う匂い。
ほのかに漂う、いつもの無臭の室内とは違う甘い香り。
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リョウ 「・・・お花?」 |
卓上に、チョコレートコスモスの花が一輪
花瓶入れられて飾られていました。
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リョウ 「・・・・・・あれ?なにかあります・・・」 |
花瓶の下にメモ用紙が一枚。なにか、書いてあります。
『食べられるのかわからんが、
匂いならわかるかなって』
これは、きっと―
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リョウ 「わぁ、素敵なお返しです・・・!ありがとうございます!」 |
さすが先生です。
チョコを渡す前にお返しをいただいてしまいました。
ふふ、嬉しいなぁ・・・
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その日は、色々な場所に行き、たくさんチョコをくばりました。
それでもチョコはあまってしまって。
それなら、みんなに食べてもらいましょう。
私を見つけてくれた、2-2へ。
大切な、私の居場所をくれた、みんなへ。
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リョウ 「これで良し・・・っと。」 |
余ったマシュマロチョコを教室の片隅に置きます。
本当に、本当にいい人たちです。
普通はこんな得体のしれないものなんて食べてもらえないでしょう。
見えない感じない、いるかすらも分からない私を信じてくれて、お返しまでもらって。
ああ、嬉しいな。幸せだな。
だから、だからこそ。
感謝を、愛情をちゃんとかえさないと。伝えないと。
少し前までの私、みてますか。
今ではちゃんと、受け取ってもらえますよ。
私の声、みんなにちゃんと届いてますよ。
みなさん、ありがとうございます。
当たり前の日常、当たり前の会話、当たり前の感謝。
そんな当たり前が、私にとっては、なによりの幸せなんですから。
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―帰り道。夕暮れ。
―紅に染まる空。
―帰宅中でも、緩んでしまう顔。
私は幸せをかみしめていました。
なんて幸せなバレンタインなんでしょう。
こんなに、喜んでもらえて。
こんなに、お返しまでただいてしまって。
ああ、こんな幸せが、どうかどうか
ずっと―
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リョウ 「―――え?」 |
―知ってたじゃないですか
―いつだって
―唐突に
―いつもの日常は
―こんなに簡単にも
―終わりを迎えるんだって。