
イバラシティに戻ってきてから、ぼくは出来るだけ街を探索してみた。
お陰で、色々な催し物に誘ってもらえたし、参加できた。
メツコーのチゲ鍋大会、ソラコーとハレ高のクリスマスパーティ。
女学院のパーティには参加できなかったけど……あれは女性だけってことだったし、仕方ない。
街で最初にできた友達とショッピングに行ったり、図書館で勉強してみたり。水族館にも行った。
先輩と七不思議スポットの探検をして、ちょっと昔を思い出した。
そういえばイチャイチャしないと出られない部屋、っていう部屋もあったっけ。ちょっとドキドキしたかな。
一人で出掛けた先で買ったたこ焼きって食べ物が美味しかった。素敵なクッキーとお茶のお店も見つけた。
年越しは学校でみんなと過ごせて、とっても嬉しかった。
これからも、もっとずっと色んな場所に行って、たくさんの人に会うんだ。
そうすれば、どこかぼくがいてもいい場所が見つかるかもしれない。
子供の頃からお父さん、お母さんについていろんな国に移り住んだ。
どこも新鮮で、毎日発見の連続で、楽しかった。 運が良ければ友達もできた。
でも、どんなに楽しくても、次の転勤先が決まれば、その街とはお別れ。
友達はみんな精一杯見送ってくれた。
その時にもらった手紙やプレゼントは、部屋のトランクから溢れそうなほど。全部大事な宝物。
友達はそのまま自分の家へ。ぼくは次の国へ。
また見知らぬ街の探検が始まる。
ぼくも見送る側になりたい。
友達にバイバイって手を振って別れても、また次の日に会いたい。
みんなの日常に、ぼくも入れてほしい。
ターリヤさんってお店に来てくれたお兄さんが好きだと言っていた歌を思い出す。
君のことじゃないよ、って言ってくれた。わかってる。お兄さんとは初めて会ったんだから、偶然だ。
どこに行けば「通りすがり」じゃなくなるんだろう?
なにをすれば、立ち止まってみんな輪の中にいられるんだろう?
透司先輩とがらくたおもちゃのゴミやまを探検した時、
夕焼けを背にパレードを続けるおもちゃたちを見た時。 あれはぼくだと思った。
行き場を失くして、ゴミ山の中でずっとパレードを続けているおもちゃたち。
パレードをやめたら、我に返ってしまうから。
どこにも帰る場所がない自分に気づいてしまうから。
だからずっとパレードをしよう。ずっと楽しく、笑って、歌って、陽気に騒いでいよう。
パレードを続けている間は、パレードの中の一員でいられる。居場所ができる。
ぼくは、透司先輩に見つけられて連れて帰ってもらったウサギのぬいぐるみが、とても羨ましかった。
だからもっとずっと、パレードを続けよう。
楽しいことを探して、いろんな場所に行こう。
キラキラするものを見つけて、みんなと分け合おう。
たくさんの人と話して、馬鹿騒ぎをしよう。
ウソでもいい、ホントじゃなくても、キラキラしたものが手に入れば幸せ。
ほんとうはどこか帰る場所がほしいけど。
それが見つかるまで、パレードを続けよう。