
ハザマの世界で出会ったイバラシティ側の者達と行動を共にすることになった。
出来得る限り大勢で纏まる方が良かったが、この世界の法則なのか4名以上の集団は結成できないようだ。
まあ、ロストなる存在を捜し当てたりせねばならないので小回りが利く方が良いのかもしれない。
仲間達の異能はまだ詳しくは分からないが、一目で戦闘向きだと分かるのはミズキくらいだろうか。
一番戦力として計算されるべきオレの異能は戦闘向きとは言い難い。
早めに戦う為の武器を調達せねばならないな。
異能が無い人間だと思っていたオレが自身の異能に気付いた切っ掛けは中学生時代、同級生と喧嘩になった時だった。
喧嘩相手が興奮して火炎系の異能をオレにぶつけようとしたその時、オレは咄嗟に足元に転がっていた大きめの石を喧嘩相手の眼に投げつけてしまった。
正当防衛だったと思うが、それでもその瞬間のやってしまった、という思いは今でも強く記憶している。
オレの投げた石は確かに喧嘩相手の右眼に勢いよくぶつかった。
直撃コースだ、鈍い音と共に喧嘩相手は倒れ右眼を抑えながら悲鳴を挙げた。
それまで遠巻きに見ていた他の同級生たちもわっと集まり、喧嘩相手に大丈夫か?と声を掛けたり、先生を呼んだりした。
「…怪我は無かった、ですか。」
病院に運ばれた喧嘩相手が付き添いの先生と共に戻り、その診察結果を知らされたオレは喧嘩相手に怪我が無かったことに疑問を抱くよりまずほっとした。
右眼に石をぶつけられた喧嘩相手の右眼は何ら異常も怪我も見受けられなかったとのことである。
こっぴどく先生に叱られたオレと喧嘩相手はその後仲直りした訳だが…ずっとこの一件はオレの心に残った。
幾ら正当防衛だったとは言え、オレの行動は喧嘩相手の右眼を失わせるような結果を招いていたかもしれない。
それ以来、些細なことで喧嘩をするのは止めたし、いざという時に武器を使わずとも相手を食い止められるように身体を鍛え始めた。
そして高校時代、身体を鍛えていたことが原因で荒っぽい先輩に眼を付けられ喧嘩になったことが、オレ自身の異能を把握する結果になった。
なにせ喧嘩に勝利したオレ自身は結構な傷を負っているのに、負けて倒れ込んだ先輩の方は軽傷しか残らず、傍から見れば勝者は先輩に見える位だったのだ。
(流石にダメージ自体は有るらしく倒れた先輩は負けを認めたが)
流石に不審に思い様々な異能を検査する施設で判別して貰ったところ、自分が攻撃した相手に大きな傷を残さない類の異能と判断された。
重宝はしている。
その後の経験から、かなりのダメージさえも相手には致命傷として残らないことが分かった。
危険な異能者を相手取る際、武器を使用せざるを得ないケースはよく有るが、武器を使用することで相手に致命傷を与えてしまわないかという場面でもオレは躊躇をあまりせずに済むのだ。
警察官である身としては、破壊に特化した異能より有り難いとさえ思っている。
勿論、過信は禁物だ。
遭遇したことは無いが、異能を無効化するような異能者が居たとしたら、致命傷を与えてしまう恐れはある。
願わくば、これから対峙するアンジニティ側の連中にそんな異能者が居ないことを願う。