
銀髪の相良伊橋の女性が来た。
ふらりと立ち寄ったのだとか。
教会に住んでるらしい。
あまりは神は信じてはいないようだったけど。
また来てくれるといいな。
聞きたいことがたくさんある。
緑髪の教祖様が来た。
一神教の教祖だ。
あちらとこちらの教えはどこか似ているらしい。
見てはいるが手は出さない?ふざけたことを。
また今度、あちらの教会にもお邪魔してみようと思う。
しっかりと準備をしてから。
オオキタ区の喫茶店の店主がきた。
懺悔というほどではないが聞いてほしいと言われたことを聞いた。
店主だけあって、色んな人を見ているのだろう。
何処かこちらを試しているような口調だった。
僕が他人を理解する事なんてないけど。
白黒髪の高校生が来た。
今がとても幸せらしい。
精神力を消費して物質を作り出す異能だとか。
使ったらそれだけ消耗するというのは使いづらそうだ。
持久戦が狙い目か。
チナミ区のシスターさんが来た。
一度あちらの教会にお邪魔したことがある。
お菓子好きなようで、気が合う。
ほかにも共通点があるはずだ。
例えば、清廉潔白ではないとか。
後日お菓子店巡りをする約束をした。楽しみだ。
楽しみだ。
また白黒髪の方が来た。
スコーンをあげた。
異能の代償のためか、随分精神が強いようだった。
サプライズは失敗に終わってしまった。残念。
代わりにこちらも何かをされた。
彼の言った言葉の意味が理解できない。
心のない人間なんていない。
10歳くらいの少年が来た。
神を信じているらしい。
でも、やはり初対面の人に失礼をしてはいけないと思った。
彼はどちらかと言えばこちら側だった。
嫌な記憶は忘れて、平穏な日常を過ごせますように。
ツクナミ区の高校生が来た。よく高校生がくる。
静かな所を探しているようで、他愛もない話をした。
本が好きなのかもしれない。物語のような語り口だった。
久々にごく普通に過ごした気がする。
救われなければいけない、なんて思わない。
僕は救いを齎すような人間ではない。
辛い記憶に泣いた幼馴染も、乱暴に扱われ壊れかけた幼馴染も、自分の価値に気づけない小説家も。
救えない、救う手立てがない。
だから。
せめて貴方達の辛さを、僕が食べてあげたい。