学校行事で、学園関係なく希望者は全員参加できる修学旅行があった。
修学旅行については、以前に賢人さんから聞いていたおかげで少しだけわかっていた。
まだ、性別についてバレてはいけないから人前で着替えないようにしなければいけないけれど、それでも参加することが許されて嬉しかった。
戦闘実習、というものでイノカクと言う競技も体験する事ができた。そうした競技に今まで興味を持ったことがなかったし、兄さん達も話題に出すことがないから今回の修学旅行で、初めてその競技の存在を知った。今回は戦闘実習だったから楽しむ、と言う感じではなかったと思うけれど。きっと、学校の部活動として行われているイノカクは楽しんで行うものなのだと思う。
ギオンシティやゴールドシティを再現した場所での仮想観光も、リゾートアイランドでみなで遊ぶのも、本当、楽しくて。
学校に通えていなかったら、体験できなかった事なのだろう。
他の人達が楽しんでいる様子を見るのが、とても楽しかった。
今回の修学旅行が体験できただけでも、学校に通えて本当に良かった。
あぁして楽しんでいた人達の中に、アンジニティの人達もいるのかもしれないけれど
アンジニティの人達も、あの修学旅行を「楽しい」と感じられたなら
それが、せめて、アンジニティの人達にとって「良き思い出」で、ありますように
無事、おひいさまは修学旅行を楽しまれてきたようだった。
若様が当主様を説得してくれて助かった。
若様が修学旅行時どうなさっていたかについては全く参考にはならかったが、説得は助かった。
当主様としても、イバラシティにいる間くらいはおひいさまに「普通」にかろうじて近い体験はしてほしいと思っているのかもしれないが、あの人には「当主」と言う立場もある。
その分、若様は立場関係なく遠慮も何もなく当主様にご意見できるから、もしかしたら当主様としても助かっているのかもしれない。
もっとも、そうした様子を周囲が「当主と三男は仲が悪い」と勝手に誤解し、囃し立て、対立を煽ろうとするのは面倒な状況だが。
おひいさまが修学旅行に行かれている間、こちらとしても少しばかり考えることがあった。
母さんの事。
九十九は、「よくある異能事故だ」と言ってくれて、俺は悪くないのだとずっと伝えてくれていた。
俺としても、そう判断していたつもりだった。
それでも、母さんの仇討ちを母さんの兄弟が依頼したのだ、と言う話を聞いた時に「やはり俺が悪かったのだ」と思ってしまった。
九十九が、ずっとずっと言い聞かせてくれていたと言うのに、自分でも納得していたつもりだったのに。
どうしようもなく、俺が間違いを犯してしまったのだと自覚させられてしまった。
時間を巻き戻すことはできないし、やってしまったことは取り返しがつかない。
今更、その為に死ぬわけにはいかないのだと理解しているはずなのに、あの瞬間、「自分は殺されても仕方ない」と判断してしまった。
駄目だ、もっとしっかりしないと。
俺は、やらなければならない事があるのだから。
煩わしい
忌々しい
どうしてくれようか