暗い街の一角、1時間のハザマ時間のタイムリミットが少々見えて来た位の時。
|
ラプリナ 「「・・・無駄足、ご苦労様ぁ♡」」 |
救出に来たと思わしき、正義感の強そうな少年が、信じられない、と言った驚愕の顔で崩れ落ちる。
周囲には、気を失ったもの、呼吸が出来ない様子でじたばたと苦しむもの、全身を震わせてうずくまっているもの、泣き笑いの表情で過呼吸を起こしているもの、単純にひどく外傷を与えられたもの・・・様々であった。
|
ラプリナ 「「・・・ん~?」」 |
ラプリナは倒れ伏す人々を足で軽く退けながら・・・『自分の手を下した覚えのない被害者』をいくらか見かけたことに気付く。
電気柵の罠はもう様々な異能でズタボロにされ、穴だらけだろう。
トリモチのようなものを仕掛けていたところを回っているのだが・・・そうじゃないところにも、被害者は混じっていた。
|
ラプリナ 「「誰かパーティーに混じってるなぁ?こりゃ桃色うさぎさんの言ってたことも間違いじゃなくなったかもねぇ」」 |
クスクスと、ちょっと卑猥なパーティーの事を話した事を思い出しつつ・・・近い所から聞こえて来た悲鳴を耳が捕らえる。
あの放送で集まってきたのは、ちょっと注意の足りなかったイバラシティの者たち・・・だけではない。
それに乗じて暴れ回っているものもこうしているようだ。
元より、何人が集まるかも分からず、全員を相手するつもりも無かったラプリナにとっては獲物の横取りだとか、連携や手助けといった事もまた眼中にない。
ただ、己が、楽しめればそれでいい。
向こうが危害を加えてくるなら別だが・・・そういう様子は未だに無い。
かつかつ、とヒールの音を鳴らしつつ・・・たまに意地悪に、寝転がった被害者を踏みつけつつ、ラプリナは再度放送機材の揃った部屋に向かう。
戦闘の爪痕が残る扉を開き、機材の前に立ち・・・少しだけ考える。
|
ラプリナ 「「・・・被害者の声を届けるのもいいけどぉ…。うーん・・・もうちょっとドラマチックにしてあげようかな♪」」 |
~~~~~~~~~~~~~
ハザマの世界に、放送がまた響く。
先ほど、救援を求めていたものの声だ。先ほどよりも焦りが含まれたような声である。
『い、今、すごく周りで戦闘が起こってて・・・!人が、人がいっぱい倒れて・・・!!』
『どうしてこんな・・・!お願いです、聞いても無関係と思ってる人も、どうか・・・!力があるなら、お願いですから・・・!!』
そこで、短く、しかし高い声で悲鳴が上がり・・・放送は途絶えた。
~~~~~~~~~~~~~
|
ラプリナ 「「これでよし、と。いやぁ熱演しちゃったなあ。芸人なんてやめて役者でもやればいいのにねぇ、あっちの私」」 |
ケタケタと笑いながら部屋を出る。
ラプリナの目的は単純である。
『被害者が出ている事を知らせる事』『これが罠だと気づいている者にも、まだ黒幕が健在だと知らせる事』『何も気づいていない者には、手を出さなかった罪悪感と、手助けをしなかった冷たい存在も同陣営に居ると気づかせる事』だ。
これは、影響力としては微々たるものであろう。
罠だと看破している者には猶更だが・・・、だが、『そうだと気づかなかった者』や、『乗り込んでしまった者』に対してはどうだろうか?
自分の責任でしかないし、逆恨みにもほどがあるのは当然だが・・・ただ黙ってみていた者たちへの見方は、冷たくなる。
感情とはそういう物だし、どうしてもそういったうねりは避けられない。
別に、最初からそれが狙いだったわけでは無い。
ただ・・・彼女はもう既に『楽しく遊んだ』ので、ちょっとだけ追加で悪戯をしたに過ぎない。
兎の女は、上機嫌に跳ねるように、ハザマの中を行く・・・。
ENo.1075 朔蕾一紗 ENo.1312隼 志駁 前回日記に反応頂いた二名についてうっすらと言及させていただきました。