〇Eno.1186 水野杏梨
偽物の救難要請を出す声の主、ラプリナに対して因縁を持つ彼女は、誘いに乗る事にする。
他の事情を知らぬ者が罠にかかる前に、止めさせるのだと意気込んで。
…………その意気込みは、彼女の潜むであろう廃墟に足を踏み入れた時に、早くもコケてしまったが。
ふぎゃ、と、尻尾を踏まれた猫のような悲鳴を上げる。足元に仕掛けられているのは、粘度の高いトリモチのようなものだった。
そのまま体勢を崩し、鉄柵に顔面から激突する。能力の強化された彼女にとってそれだけでは致命打に等なり得ないが…。
慌てて、捕らえられた靴を脱ぎ棄てようと柵に手を掛けて起き上がろうとした・・・ところで、第二の罠が牙をむいた。
通電。感電。体が言う事を聞かず勝手に硬直し…力がするり、と抜けた。能力も何も持たない一般人なら、これは命取りであっただろう。
ギリギリで意識を繋ぎ留められるが…残念ながら、そこまでだった。
ぼやけた視界の奥に、仇の姿が映る…。
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ラプリナ 「「…あの、えっと、ここまで思いっ切り引っ掛かるとは思わなかったんだけど………残念でした?」」 |
ちょっとだけあきれたような顔をした、兎の特徴を宿す毒婦が、水野に迫る。
水野は湧き上がる敵対心に任せて掴みかかりたかったが、体が動かない。
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ラプリナ 「「戻ってきてくれて嬉しいわ。じっくりと楽しむ時間は無いのが残念だけど…」」 |
ぷちぷち、と服のボタンがいくらか外され、ラプリナの手が滑り込む。
ぱりぱりと感電の余波で嫌な感覚が残る皮膚に、冷たい手が当たり…
ラプリナの能力は、『肉体変化能力』。これは、他者にも適応される悍ましい力。
ただし、相手が抵抗をしている場合は能力効果は大幅に減衰してしまうのだが・・・それでも、
『与えられる感覚をほんの一瞬いじくる』位は、出来てしまうのだ。
「――――――!!!!!!!!???????」
水野は声にならない絶叫を上げる。
腹の辺りを、ひと撫で。
それだけなのに、何十、何百もの舌で舐めまわされるような感覚に、全身に怖気が走る。
痛みであれば、正気を保つことも出来るだろう。能力で抑え込むことも出来るだろう。
それを封じられる屈辱。
ラプリナの言う通り、彼女と遊ぶ時間は然程無かった。
しかし…
一回の手の横断で、これだ。
さあ。短い時間の中で…あと何回、その邪な手は彼女の上を蠢くだろうか?
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ラプリナ 「「あと、何回撫でられたぁい?正義の味方さん。ほおら、一人でむざむざこんなトコに来られてえらいえら~~~い。うふふふ、ふふふふふ!!」」 |
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…勢い込んでやってきた『正義の味方』とひとしきり遊んだ後、ラプリナはとても晴れやかな笑顔で、歩みを進めていく。
さあ、罠の具合はどうだろうか?
*(今後、罠にかかった場合は人数に応じてですがこのように日記で触れていこうかと考えております。その際、相談事項をSNSなどで確認するかもしれません。)