廃退した世界。異様な空に不気味な空気。
まるで知ってる世界じゃないみたい。まさに知ってる世界じゃない。
この世界は私の現実から遠い離れた場所。
ここで待っているのは非現実的な物語。
私を待ち構えているのは異形の化け物。
それをバンバン倒して、世界を守るヒロインになれる。
夢の中でも見た世界。これが待ち望んだ私の舞台。
私の活躍を見て欲しい。私の偉業を認めて欲しい。
まるでゲームのように、まるで漫画のように、まるでアニメのように!
そんな気持ちでいっぱいだった。
どんな困難がこの先あるのだろう。一人じゃ厳しいかもしれない。
でも、私には心強い仲間がいる。きっとなんとかなるだろう。
この時、私はまったく疑ってもいなかった。
私の街で出会った私の友人恩人たちが私の味方であることを。
もしこの期待が裏切られたのなら、そんなことは一切考えていなかった。
だからこそ、実際の現実はあまりに重く苦しいものだった。
どんなに主人公のような活躍を夢見ていても、私は普通の人だった。
信じていた友人が、頼りにしていた恩師が、私の街を脅かす敵だった事実は。
とても普通の人には耐えきれぬものだった。
廃退した世界。異様な空に不気味な空気。
まるで知ってる世界じゃないみたい。まさに知ってる世界じゃない。
この世界は私の現実から遠い離れた場所。
ここで待っているのは非現実的な物語。
私を待ち構えていたのは異形の化け物。
それをバンバン倒して、世界を守るヒロインになれる。
夢の中でも見た世界。これが待ち望んだ私の舞台。
私の活躍を見て欲しい。私の偉業を認めて欲しい。
まるでゲームのように、まるで漫画のように、まるでアニメのように!
「なのにどうして!!!!!!!!」
現実は酷だ。頭がぐらぐらして、もううまい言葉も出てこない。
今すぐ膝を折ってしまいたい。大声で泣き叫びたい。
友達だと思っていた人達は侵略者だった。いや、友達でもなかった。
そんな記憶は間違いだった。すっぽりと私の人生を抜かれたような喪失感。
もう崩れ落ちてしまっても仕方ないだろう。私は普通の人なのだから。
しかし、私を止めようとする気持ちと同じ大きさの怒りも確かにあった。
私は普通の人だと思っていた。でも私は笠間このみだった。
私という衝動が私をつき動かす。
絶望と怒り。整理がつかない感情が暴走する。
処理しきれぬ現実に脳が視界を歪ませる、音を濁らせる。
ああ。脳は私が欲しかった現実を与えてくれた。
私を騙していたのはあんなにも歪な姿をした、あんなにもおぞましい鳴き声をした化け物だ。
鼓動が早くなり、呼吸は荒れる。
握る拳は痛みを伴いながらぬるりと湿っている。
大地を割りそうなほど強く踏みしめる。
全てはやつらを滅ぼすために。
そして、張り裂けそうになる思いを吐き出した声はまるで獣のようだった。