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Diary | ||
――封の儀、終。 …多重の封、終。 ……存在変革、終。 ………・・・ 記憶改竄・・・終。 「神が居るとすれば。妾には残酷な神のようじゃな。」 ぽつり、九尾の狐は呟いた。 ―妖狐 常闇の章 終章『狐に孤は巡り…』― ばぢん。 風船の爆ぜるような破裂音。それと共にその封は終了した。 目の前には、かつて輩(ともがら)と呼び、同胞(はらから)と呼び、友と呼び…そして、つい先刻伴侶にと願い、想いを伝えた妖狐、狐百合 ――だが。その夕暮に映える稲穂を想わせた金色の毛並みは、好く磨いた剣の如き銀色へと為り。 無意識に異性を惑わせた豊満な肢体は、童女の其れと為っていた。 「……」 まるで別人の口からのように、遠くから聞こえる吐息。それでいて、何度も反響し、虚ろな心をじくり、じくりと蝕んでいく。 目を閉じたまま動かない少女を抱き上げる。 …息はある。臨界の際、そう願ったからだ。 ただ、悪鬼のような妖術を奮うことはもう叶わないだろう。…そして、狐百合が嵋祝の事を思い出す事も。 仙狐としての嵋祝の力の粋、そう呼べるまでに其れは強固な封印であり。その代償は大きく、妖力の大部分、そして名前以外の記憶の封――ほぼ転生に等しい事を成したのだ。 そこまでの封を為さなければ、封じきれない大悪の妖が巣食っていた。 そうはいっても。これからの生を共にしようとした娘に手をかけたのは、事実。 ぽたり。 「…全く…この、子狐めが…。」 ぽたり ぽたり… 「…妾に、涙させるなど…大妖でも成せぬ業ぞ…」 この世に生まれ出でて初めて。 古妖の狐は、泣いた。 ……… …… … 「ふう…あの爺めが。出鱈目の地図を渡しおって…再び会おうものなら化かしてくれようか。」 狐百合の送還を見届けた後、嵋祝もまた元の世界に戻り。 世界を巡る。今は遠くの想い人と同じ、銀妖狐として。 「こういうのを人間の間では『いめちぇん』というらしいのぅ…お主が見たら笑うかの…。しかし…そのあと、膨れッ面でそこそこ似合う、と言ってくれるかもしれぬな…」 自身の銀髪を一掬いして、くすくすと笑う狐。その姿には既に悲嘆は無く。 「何年かかるかは分からぬが…なに、何度死すとも探してみせようぞ。」 明けない夜など無い。昏い闇に招来された妖は、今は蒼く澄んだ高き空を仰ぎ遠い世界を思い。 「――また逢えると。信じておるよ、こゆりや。…再びまみえた時のために道化の練習でもしておくかのぅ。おぬしが笑ってくれれば良いのじゃが…」 風に吹かれて旅路往き。 仙狐の歩む道に、アネモネが緩やかに揺れていた。 To be continued 『F/ls/ /sl/nd』… |
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