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◆ レイの日記 この戦争でカレイディアンが戦えばどうなるか。 まず、同胞殺しの事実を負うことは既に理解されていると思います。 もっとも、これは戦争ですから、カレイディアの常闇を打ち払うという目的のために立ちはだかる同胞を手にかけることも仕方がない。 ですから、同胞殺しの事実は戦った者達の心理的な負担に留まるのでしょう。当面、誰もあなた方を責めることはできません。
ですが、以前も申し上げたように、殺された者が存在する以上、遺された者たちには殺した者への怨みが生じえます。 これもまた仕方が無いこと。社会的な責任が無いのだから怨むことはお門違い、そう思えるほど私たちの心は理性的ではありません。 そして、怨みというものは、一旦生じれば晴らされるか忘れられない限り存在し続けるものです。とはいえ、多くの場合は忘れるのでしょう。怨みを晴らす、つまり、怨み相手を殺すことなど誰もができることではありませんから。 しかし、一部には怨み相手を殺すことさえためらわない者がいる。そういった者が抱く怨みは一体どこへ向けられるのでしょうか。 一番分かりやすい行き先は国家自体、または国家の為政者でしょう。ですが、相手は一般人と比して何もかもが巨大で強靭過ぎます。怨みを晴らそうと思っても非常に難しいでしょうね。 となると、次に分かりやすいのは戦争に直接関わった者達。ですが、これにも問題がある。一般人は誰が戦争に関わったかを詳細に知る手段がないはずです。 ……本来ならば。
ところで、戦争を戦い抜き、魔女の手から国を取り戻した数少ない自国民を国家はどう扱うでしょうか。 放置すると思われますか?……ええ。放置するはずがありません。 内戦後、荒廃した国家を建て直すためには、民を鼓舞すべく国威の発揚が必要。そのためには、どうすることが手っ取り早いのか。 彼らと同じ民の中から、国を救った者たちを救国者として担ぎ上げるのでしょうね。 同じ一般人が国を救ったのだ。自分たちも国を救えるはずだ、救ってやるぞ。立て直してやるぞ。そう民衆に思い込ませればよいのです。 その際に担ぎ上げられる救国者たちは何と呼ばれるのか。……間違いなく「英雄」と呼ばれるのでしょうね。 そして、「英雄」と呼ばれる者を一般人が知らないはずがありません。 つまり、怨みを晴らさんとする一般人も、国家のおかげで戦争に直接関わった者が誰か容易かつ詳細に知ることができる。
お分かりでしょう。 ミーティアさんのような、数少ない正気を保ったカレイディアンが召喚士側について戦えば、戦後には「英雄」として国に担ぎ上げられ、国威発揚のために利用され、遺された者の怨みをその身に受けるのです。 もっと具体的に言いましょう。あなたは遺された者の手にかかり命を落とすかもしれない。十分に利用した後、あなたを疎んじ始めた国家により同胞殺しの罪で断罪されるかもしれない。 ……そこまでのことはなくとも、英雄として担ぎ上げられるのです。戦後、平穏に暮らすことは望めないでしょう。
カレイディアンがこの戦争で自ら戦うということは、このような危険を孕むものです。 それでも、ミーティアさんは戦いたいと思われますか。
● ミーティア ・・・うん。色々心配してくれてありがと それはあるのかもね。ていうか、それってレイの実体験でしょ? あ、やっぱり。分かるわよー。なんとなくだけど
うーん、心配してくれたのに悪いんだけど・・・ あのね、わたしこの戦争が終わったらカレイディアを出て行くつもりなのよ
どうしてって? だって、召喚士たちについていけばカレイディアで一番のお宝も見れるわけだし、他の探索者が行けなかったような危険な場所でもお宝探しできるわけじゃん そうなるとさ、カレイディアで探索者続ける意味がないのよねー そりゃ人が知らない場所への入り方が分かってるわけだから、稼げるんだろうけどさ。稼ぎのためだけに探索者やってるわけじゃないし・・・ うん。やっぱり未知のものを見たいから探索者やってるのよ。知らない場所、知らない生き物、知らないお宝。そういうものをもっとたくさん見たいのよ もう目ぼしいものを見ちゃったり知っちゃたらカレイディアにいる理由がないわ
それにね、レイ。直接戦っても戦わなくても、わたしはレイの依代になることを望んで受け入れた。自分の意思で召喚士に協力した 間接的にでも、わたしは同じカレイディアンを殺すことに手を貸したのよ そんな人間がみんなと一緒に仲良く過ごせるわけないじゃない?わたしだったらムリ。怖いよ、そんな人が近くにいたら だからいいの。太陽を取り戻して、この常闇を晴らして、もう一度光の射すカレイディアが見れればそれで十分
まぁ、そういうわけなのよ。だし、戦後の心配なんてしなくても大丈夫よ! だからお願い。わたしにも戦わせて。これは、わたし達の戦争だから
◆ レイ ……認識も覚悟もされていたのですね。余計なことを聞いてしまい申し訳ないです。
分かりました。では、訓練を続けましょう。 いいえ、これからは剣だけではありません。銃、弓、槍、槌、魔法。存在する武器全ての訓練です。 いかなる武器でも、いかなる状況でも戦いうることは生き残るための必須技術。これはどんな世界でも妥当するはず。戦後のことを考えれば、ミーティアさんも多くの武器や魔法の扱い方を覚えておいた方が良いでしょう。
さらに、よりミーティアさんに合った戦い方へ、肉体から変えようと思います。 私は魔法が使えませんが、ミーティアさんは魔法を使うための基礎を修められている。 今までもロバーズウェポンなど魔法の力を使ってはいましたが、より魔法に寄った戦い方の方がミーティアさんは効率的に戦えるはずです。 幸い、召喚士は魔法寄りの新しい肉体を用意してくれたようですし……ええと、なんでしたっけ?名前を忘れてしまいましたが。 あ、そうです。そう、シルバーハンド。魔法と戦技を融合させた魔法戦士の肉体です。 彼らの肉体こそ、私とミーティアさんの力を合わせ活かせるはずです。◆ レイの日記 この戦争でカレイディアンが戦えばどうなるか。 まず、同胞殺しの事実を負うことは既に理解されていると思います。 もっとも、これは戦争ですから、カレイディアの常闇を打ち払…
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