ビシュクの一週間

「はは。抱きしめるのは
あまり性にあわないけどねぇ。

それに、どうも女同士で抱き合ってると
あらぬ掻き立てたがる手合いが多いからなぁ。

…世の中には天地にも分からぬことはあるというのに。

っと、そうだ。
話は変わるが、夜にちょっとの時間でいいから
トレーニングの相手を頼む。

…ああ。ちょっと、色々と足りないような気がしてね。」

「…ビシュクさんには、色々な意味で敵いそうにないですよ…。」

「アキカン300は、依代とは違いますよ。ただ、この依代じゃないと動かす事が出来ないみたいですけど。」

「なんでも、依代に物を大事にする心がないと駄目とかなんとか…あと、この変な紋章とか。」

「…流石に、ろぼっとにまで猫耳としっぽがついたら私怖いですよ…。」

「そうだなー…私なんかも藍色は稼ぎにくいしね…。刀を使う人は手に入れにくいだろうし…。」

「普通の剣術とはまた扱いも違うからねぇ。剣とは違う。そして扱いをちょっと工夫すれば、もっと攻撃力を高める事ができるんじゃないかなって。…私魔法は使ったこと無いからその辺の制御は不安定だけども。」

「変わった飲み物…？おでん汁とか？」

「休憩所は顔出してないなー…またのんびりしに行きたい。」

「まぁとりあえず一つの道をしっかりしないとね。中途半端か、全てを完璧か…その辺は個人の頑張り次第。私は今の所攻略戦にしか華がないけど。」

「成程、私みたいなケースの人、いっぱい居るんですね……

でも、ということは？
あの、この戦いが終わったら私とか
そういう一度死んだ後戻ってきた人たちって……
いえ、ちょっと聞いてみただけなんですけど。」

「（撫でられて）
……ええ、大丈夫、私もビシュクさんは
先ほどまでああは言いましたけど
少なくとも敵ではない、そう思っています。
ふふ、もしそうなら先ほどウェアフォックスだ、って言った時点で
食べられちゃっていますから。

では真実が分かる日まで、とりあえず頑張ってみますっ。」

「ふむふむ……自分の中の幻想を強く思いながら
　それを妖しの気や魔力と混ぜ合わせ……
　そして体の内に……」

「……げ、げぼげぼー？」
（意訳：……ど、どうでしょう、できました？）

（どうやら声帯だけカモノハシになってしまったらしい）」

「げぼげぼ、げぼ」
（意訳：うぅ、なんか子供扱いされてるのか、
　もしくはペット扱いされてるような……
　たっ、たまにと言ったらたまに！　ですよ！）」

「（喉を撫でられ優しく抱かれながら）
　げぼぼ、げぼげぼ……。
（意訳：ぐるる、ぐるにゃーぅ……）」

「――っげ、げぼぼ！　げぼげぼ！　ぎゃぼー！
（意訳：って、こっ、これじゃ完璧に猫じゃないですか！
　ダメダメ！　やっぱりダメです、ここまでですっ！）

（ふと我に返り真っ赤になりながら腕の中で大慌て）」

「げぼげぼ、げぼげぼ」
（意訳：緊張……も確かに大きいですね。
　依代のせいもあるでしょうけど、元の私の性格が
　一番の要因なんだろうなぁ……。
　これでも皆さんとお話してだいぶマシになっては
　きたんですけどね……）」

「げぼぼ、げぼげぼー！
（意訳：わぶぶ、な、なるほど確かに。
　……うーん、やっぱり大人だなぁ。
　私は思わず周りに当たっちゃうクチなので……
　そういう風に考えられる余裕が欲しいです」

「げぼ？！　げぼぼ、げぼげぼ……！
（意訳：大悪の妖狐、ですか……？！
　し、信じられません……。
　……そういえば、元の世界では
　一体どんな風に過ごしてたんですか？」

（少々迷いつつも、恐る恐る訊ねてくる）」

「そうでもないのだけどね……自分で扱えないシロモノを引き当てたところで困るだけだし。

まずは自分で扱えるものを引きたい処なのだけど。
中々難しい。ままならないもので。」

「まぁ、受けはよかった……みたいで何より。

暫くはこの格好のままだろうけど。はろうぃんとやらがいつかも知らないのだが……ってもふもふしない。」

「下手な装飾よりも実用を……と突き詰めると、自然とそういうものになるのかもしれないな。
戦に立つ者としてみれば、そういったものは垂涎ものだろうが、中々転がっているわけでもなし……。

私より優秀な探索者はほかにいくらでも居ると思うのだが。
それこそ自衛程度も私は出来ないし。前回も命からがら逃げ帰った体たらくだったから……。
それでも、探しに付き合えというなら喜んで付き合うけども、ね。」