そう言って差し出した箱からは甘い香りがする

そして　ウィルトは　またね　と　しっぽを　ふって　はしって　いった

ぬこは　アリエスの　ほうを　びしっと　ゆびさし

とか　なんとか　いいながら　

その小柄な魔法使いに以前に会ったのはいつだったか。
以前よりも心なしかその顔つきが凛々しく感じられた。

小さな瓢箪と、軽く燻した野鳥の肉を差し出す。
来年の花見を出来るまで、この世界にいそうに無いないから。とは言わなかった。

うまくもないことろポツリ、とつぶやいて、アリエスに手渡すと、

と笑顔を残し、直後に視界から姿を消した。
その後には一陣の風だけが残った。

　にじり寄り。腰を密着させながら、しなだれかかり。

　人差し指と親指で隙間をつくりながら、非の打ち所のない完璧な笑顔で迫る。

　狐は、知的な表情でキリッとしながら言った。

　くい、と少年の顎をもちあげながら艶やかな視線を送りつつ、狐はのたまう。

　慣れてしまったら、からかえなくなるではないか。腕組みして、うーんと悩み。
　その態度で赤くなる少年を見て、楽しそうに頭を撫でてやるのだった。

　別れの刻は次第に近づいてくる。エルフの少女をまじえ、他愛もない話で盛り上がり、

　ウィンクをして、肩をすくめる。
　少年を撫でる仕草からも、彼を大切に想う気持ちに偽りはないと信じることにした。
　そもそも、狐の許しが必要なわけでもないだろうが、けじめ的なものだ。

　いまはじまる、異世界文化交流。

　紫髪の少年を抱き寄せる。それはいつものような悪戯っ気のない、柔らかくも優しい抱擁で。
　肩越しに、金髪の少女へ視線を移す。目礼で、言葉を交わし。

　また逢おう。そう一言口にして、微笑みながら緋金の狐は立ち去った。
　


※最終更新につき。最後まで交流戴きまして、ありがとうございました！



　白亜の壁がそそり立つ平和な王国の、賑わう神殿の傍で営業する喫茶店。
　オープンカフェとなっている敷地内の椅子に、夕焼け色の髪を揺らす女性が座っていた。
　彼女の目的は、まもなく通りかかかるだろう"２人"に声をかけること。

　穏やかな琥珀色の紅茶で喉を湿らせながら、頬杖をついて大通りに目線を配る。
　ああ、見えてきた。懐かしい姿。はしゃぐ紫髪の男の子、手を引かれる銀髪の男の子。
　遠く揺れる気配。どうやら"彼女"は気づいたらしい。ふふ、と口元を綻ばせて。

　さて、どういう出会いにしようか。
　熱い紅茶を大事なところにぶちまけて、布でふく振りして頬ずりするのが良いだろうか。
　それとも、わざとぶつかって絡まりながら胸を押し当てるなんて展開が良いだろうか。

　狐は、呆れ顔の黒髪の青年に赤子を預けながら、感動の再会をするべく悠然と立ち上がり――。

アリエスの話に感心して頷き。

一抹の不安を感じつつもやはり飛べるということの方が嬉しいようだ。

くすくすと笑いながらぎゅ―しかえし。
夏の暑さは苦手だけどアリエスの体温はいくら熱くても心地よいようだ。

アリエスの言葉に頷く。

師匠の子供の頃ってどんなだったんだろうと興味津々な様子だ。

やや遠い目でふかーいため息をつく。

だったら楽なのにね、と笑って。

ごくり。

したんでしょう、と口を尖らせ。
二人の誘いの言葉に嬉しそうに微笑む。

そして師匠の言葉に少しだけ考えた後、まっすぐに見つめ返し。

傍らのアリエスの見つめて手をぎゅっと握る。

ぎゅーされて嬉しそうに笑う。

熱を込めて強調した。

それはどんなに幸せなことだろうと想像して照れ笑いを浮かべる。
そしてアリエスと師匠の誘いに希望に満ちた顔で頷き。

親指を立てて。

手を振って。