死んだ人をどう扱うかって言うのは、場所や文化で考え方が違う。
　同じ人間同士でもこの辺りは千差万別らしいから、当然、僕たちニューロにはニューロの死生観がある。
　ニューロにとって、はじまりは海だ。終わりも海だ。

　寒いし、土地も貧しいし、海の恵みにも遠いからうちは貧乏なのだ。

　精々、泥沼がいいところだ。

　用意しておいたアオサの塩焼きを食べ終わったので、荷物を畳んだ。
　トムはなんか、うわっしょっぱっみたいなことを言いながら岩塩のカキ氷風バナナソース添えを食べてて、それで海の話になったんだったかな。
　あと、この先にいる不死者を大量にひきつれた司教さまの話と一緒になって、塩は身を清めるからアンデッドとの戦いにはいいよね、みたいな話になって。

　足元の影の中に話しかけると、ネザーがちょっとだけ顔と尻尾を出して、うにょんと頷く素振りを見せる。
　あの黒騎士の不思議な黒い霧を浴びて以来、ネザーとの契約は強くなっていく一方だ。
　そうすると不思議で、最初は訳が分からなかったこいつの仕草がだんだん、人間のように洗練されてきてるように見える。
　最近は適当に話しかけても、ちゃんとリアクションが返ってくるから不思議だ。

　尻尾の先を見てみる。
　ネザーの通信を見て、よく分かんない回線に割り込んじゃって、それ以来、ネザーの尻尾はぴくりとも反応しなくなってしまった。
　血をあげてもダメだった。
　ネザーは変な顔をして首をかしげて、「これ、どうすればいいの？」とでも言いたげに僕の顔を見返すのだ。
　今までのお前の挙動はなんだったんだ、って脱力してしまった。

　通信が繋がらなくなって、あいつとも会えなくなってしまった。
　だから多分、あいつは本当に、ネザーの通信に紛れ込んできているだけだったのだと思う。

　塩水氷のとけたバナナソースの残りをかきこむトムに、水筒を渡すと、トムがうっと呻いて頭を抱える。

　いや、こんな有様で勝てたらそれはそれで、あの司教さまそれでいいのかって感じではあるんだけど。


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※いつも通り、PTMのENO.1741・トムをお借りしました。