…俺はまだ戦闘はできない。
フョードルを頼む。

だいじょうぶだよパパ！
ぼくにまかせて！

そうか？
じゃあ、フョードルのお手並み拝見と行こうかな。

あんまり大人数相手にしたくないですね……

さー、案内したわよ。
もうちょっと先が上に行く階段ね。

………つとめている……

……そうだね。つとめているとも。わたしは魔女でいなければいけないんだ。
理由、それを聞いて、どうする？そうやって、魔女であろうとつとめる私に質問をすることは、やさしいことだと思う？
その逆じゃない？つとめる私を貴方は崩そうとしているんだよ。

それをして、もしも私を崩してしまって……貴方は助けてくれるの？

……ごめん。話が飛びすぎた。
貴方の言う通りだし……人にはそれぞれ理由がある。君にもあるように。
私は確かに、生粋の魔女ではないかもしれない。でも今は魔女だ。立派なね。それでいいだろ？

それに……貴方はメルンストゥーラの人間。
貴方にいろんなことを話したとして……そのつもりがなくても、その情報を利用されかねない。
あなたはそういうところにいるんだよ。

………

もし、何もかも終わって、カタがついて、メルンストゥーラがなくなって、村も元通りになるかどうにかなって、貴方もまともな人生に戻らんとしたとき、まだ私のことを覚えていたら……
再び私をたずねてほしい。そうまでして私の話を聞きたいと思うならば、だけど……
そのときは、私の理由をぜんぶ、話せると思う。

うん、嬉しかったよ。
悪いことをしてほしくない、なんて、いろいろと思われてるみたいじゃないか？

叶う？……それだけ？
いつ、どうしたら叶うんだ……

………ルーアハ、もし貴方が良くないエンブリオで、
カミユを騙しているのだとしたら、私は許さないからな。

本当か？　ありがとうよ。
あんたのおんぶなら安心して潰れられるな。

ひとつだけ。
あんたが《男だから》背負う……言い換えるぜ、
私が《女だから》弱いものとして扱う、
って言い方は、よしてくれ。

人間同士だ。潰れたほうが起きてるほうの面倒をみる。
それでいいじゃねーか。

帰るっつっても、ステップみたいなもんだけどな。
一度拠点に行って、また別の世界へ行くだろう。
ひとつところへ留まるのはガラじゃない。
それにしたって、すべては生きてメルンテーゼにケリをつけりゃあの話だ。
パラダイス殺しで終わるとも限らねえしな。

好きだよ。愛着がある。でも私は理由づけができるな。こいつが母さんにつながっているからと……こいつが私に与えてくれる恩恵が、いじらしいからだ。
そのへんは、性分かも知れねえ。理詰めでやるのが好きなんだよ、私は。好きにだって理由を見つけるのが好きだ。
例えばあんたの好きなところだって、指折り数えて挙げられるぜ。
ルーアハは……だからまあ、率直に言って、よくわからなかったんだよ。なんだってあんたがそいつを好きなのか。だから不思議だったんだ。私は、理屈屋だから。

ああ……なるほど。最も弱い者が、受難にさらされて、
それでもなすべきをなしたから、讃えるに足るのか。
それなら、わかる。人が集まる旗印の、ひとつの形だ。弱さの中で花咲く強さってのは。

……悪かったよ。その女の強さのために集まったというより、
尊さのために集まった。そんな信仰なんだな。
見返りなんて言い方をするべきじゃなかった。
そいつはたしかに、今やそう見いだしがたい、敬虔さの形だ。

私は自分の中に火がある。あんたは自分の外に火がある。これはもうどうしようもねー。例えば私が自分の力を信頼とともに見出す、手作業や革命の遂行の中にだって、あんたはきっと、導きや恩寵を感じ取るだろう。
これは、世界に捉え方の問題だ。私の世界は、私の内なるもので埋められようとする。あんたの世界は、あんたの外なるもので満たされようとする。

……信仰は苦しい。滅びへ向かうこともある。信仰の中にある者は、信仰の崖に気づけない。見つめなおしても何も見えない闇の中で、歩くこともできない。ひとりでは。……

あたしはあんたを助けてやりたいが……いつも傍にいられるわけじゃない。

……味方を作れ、カミユ。あんたとは違う信仰を持った、それとも信仰を持たない味方を。
あんたの信仰が導く、魂の針路は変えられないだろう。だが、あんたがこぼれ落ちようとする信仰の崖があったなら、……あんたの味方が助けるだろう。

メルンストゥーラに、信頼できるやつは何人いる？　四、五人はいるか？
そいつらを大事にするんだ。そして、……あんたの信仰がそいつらの力になれる時には、助けてやるんだ。
人間は一人だと死ぬ。だから、孤立するな。させるな。

……信仰のない人間には、ない人間なりの弱さがある。
そのうちあんたにもわかる。

本当にきたねえんだよ。そりゃじっくりやれば、一文字、図案として恰好いいのは書けるさ。だが、文章にはできない。

……あんたの母親は、病気かなにかでか？
平和な村だったんだろ？

革命ってのは、既存の政体をひっくり返すことだ。政体ってのは……人が作った、人を統治するシステムだ。
だから、王を殺して、まあ、穏便な退位でもいいんだが、退けて、新しい政体を作る。そういうことだ。
ゆえに……神が直接統治してるんでもない限り、神を殺すことには、行き着かない。普通、神は政治をしないからな。
教会法を変えるために教会を壊したり、教皇を殺したりはするけどな。
もっとも、「神のごとき王」が治める世界の住人にとっちゃ、王殺しが神殺しみたいな大業に思えることもあるんだろうがね。

鋭いな。肺だけじゃない。胃も眼の一部も、エンブリオに分けている。
私の五体はあれこれの契約でこま切れさ。
契約の時、生命力を捧げるだろう？　私の命の証しは、ずいぶんエンブリオにやっちまった。

パパのために、がんばる！！

ふん

……手早く済ませましょう。

さ、あいつらの先が階段だから。

君の教育には・・・・・そうだな・・・・・・・・

ふふ、ふ・・・・・つ、つよがりおって・・・ッ！！

さぁ行きますよ、皆さん。

任せちゃってくださーいっ！！

任せちゃってくださーいっ！！

任せちゃってくださーいっ！！

任せちゃってくださーいっ！！

任せちゃってくださーいっ！！

任せちゃってくださーいっ！！

任せちゃってくださーいっ！！

任せちゃってくださーいっ！！