前回のあらすじ



ローバル。妖精の魔力を吸収して強くなるだけではなかった。
その妖精の持っていた性質や、能力までも奪ってしまう。
コランとシュタルはその能力によって逆転されてしまったのであった。
大ピンチの妖精たち。しかし、そこに空を浮く船と共に現れた妖精の突如の砲撃。
一体彼女のは何者なのか。そして、ローバルには勝てるのか…。



・・・

・・・

・・・



*ドゴォォォォォンッ！！！！*

当然の砲撃に吹き飛ばされる二匹のローバル。
ここは城内。なぜ建物の中にこのような船が飛んでいるのだろうか…。
だが今は、そんな疑問を掲げている暇はない。
ひとまず、その爆風によってコランを手放し派手に吹き飛ぶ。
しかし…当然コランも一緒にぶっ飛ばされたわけで…。

あの状況のままではどの道助からなかったとはいえ、怒りをあらわにしている。
意外にも、元気そうである。

体力は残っていても、気力に限界がきていてクラクラとしている。
使える分の魔力はほとんど吸われてしまった。それはほとんど疲労困憊な状況と変わらない。

ピアンタは、フラフラで飛ぶことさえできないコランに肩をかしながらも
まだ名前の呼び方もわからないその妖精に、敵の性質を教える。
誰かは知らないが、ここはその妖精に、まかせるしかない。

コランは、プリーストのような高等な回復魔法とまではいかないが、
それなりの回復魔法なら会得している。それさえ使えば回復できるのだが…。

妖精が腰につけている、道具袋と思われるものからポーションが取り出され
それをポイッとコランのいる方向に投げたかと思うと、ポンッと音をたてて人間が使用するくらいの大きさになる。
どうやらあの道具袋は、なんでも小さくして収納できるマジックアイテムのようだ。

どうやら貴重な薬らしい。お宝と言っているあたり、元は秘薬、財宝なのだろうか。
古めかしい瓶に青く輝く液体が入ったポーションだ。

コランもろとも砲撃されたというのに、その行為であっさり信用する様子を見せるコランであった。

海賊…。気になるところで、再びローバルが襲ってくる。
青い仮面のローバルは先ほどの砲撃の傷はすでに回復している様子だった。
また、妖精の能力を使ったのだろう…。

戸惑うピアンタ。海賊コートの妖精は、くるりとローバルのいる方向に滑るように向きを変えて、口を開いた。

叫ぶように名を名乗った。
次の瞬間、バニラの上空で待機していた船が、ローバルに向けて砲門を向ける。

容赦のない砲撃。もともとは敵船や建物に使う大砲を、ローバルにあびせかけた。
白い仮面のローバルは、その一撃で跡形もなく吹き飛んでいく。
白ローバルの得ていた能力『物理耐性』を物ともしない破壊力であった。

あまりの威力に、砲撃された場所は、床が崩れ瓦礫の山となっている。
煙で視界が遮られてよく見えないが、白ローバルが消え去ったことは確認ができた…。
残るは…。

青ローバルはエンジェルケアによって、大砲のダメージを大幅に軽減しており
そのまま煙にまぎれて、バニラの至近まで近づいていた。
バニラの上空に浮く船…。それを操るほどの魔力。非常に大きな魔力を持っているに違いない。
それを察することができるほどに、ローバルはその力ほしさに突進した。

余裕の表情を見せるバニラ。
突進してくるローバルを見て、バニラもそれに向かって突進していった。

ローバルは魔力を奪う、ちゃんと説明したはずなのにバニラは接近戦を試みたのである。
そして…

*ドスッ！！*



バニラは、水晶を持っている手で、腕ごと青ローバルの胸に突き入れた。

ローバルの身体が、ドロドロになって溶けていく…。
どうやら人型を維持できなくなってきたようだ。魔力を吸収する力はバニラのほうが上…いや…
バニラが自慢のお宝と呼んだ、その水晶の力だろうか。

腕をローバルから引き抜く。魔力を吸収した水晶は、綺麗な光を輝かせていた。
バニラは少しローバルから距離をおいたかと思うと、素早く詠唱し…水晶から荒れ狂うような水の魔法を放出した。

ローバルはごぼごぼと水に溺れるようにまざり、そのまま洗い流されるように消えていったのであった…。



・・・

戦闘勝利！！

・・・



戦闘が終わると、バニラの上空に浮遊していた船はうっすらと消えていく。
どうやら、あの船はバニラの巨大な魔力で召喚された船だったようだ。

コランはすっかり回復した魔力で、回復魔法も使用してすっかり元気になっていた。

傷は治った。
シュタルには魔力がないため、ローバルに魔力を奪われたダメージも受けていない。
しかし…

明らかに様子が変であった。
身体的には大丈夫…、だが、どこか落ち込んでいるような、そんな雰囲気が伝わるのであった…。

コランは大雑把にだが、ローバルのことについて知っている情報を伝えていく。
それを聞いてバニラは、興味津々な様子に頷きながら聞いていた。

バニラは、何やらわくわくとしている様子を見せている。
ローバルは妖精の魔力を恐ろしい存在、なのになぜ、このような表情ができるのか…。

コランはまったく話についていけてなかった。
むずかしいよー、はなしがむずかしいよー。

よくわかっていないのでとりあえずOKを出すコラン。
別にコランとシュタルが決めることではないし…それに…
この海賊妖精は、「いやだ」と言っても絶対についてきそうな雰囲気が、ひしひしと伝わってくるのであった…。

・・・

・・・

・・・

シュタルはその場を離れ、城内から外の様子、空をあげていた。
そろそろ夜がくる。そう思わせるような夕焼けが、眩しく輝いていた…。

シュタルは、握りこぶしを作って、ギリギリと音がなりそうなほどに、強く握りしめていた…。

つづく。

ペコリと一礼。

タンポポ荘、特にリチェッタではよく会うものの、
外で出会うのは今回が初めてで、なんとなく新鮮に感じられた。

初めて見る個性的な顔触れには、目を輝かせて。

そして、練習試合が終わった。

今回パーティを組ませてもらった面々は、明らかにハディートよりも強かった。
それは攻城戦でも感じた事である。仮に一対一で戦っていたとしたら、
結果は分からなかっただろう。

遠くから、見慣れた風貌だが若干明るい色彩の植物が近づいてくる。
森の中で魔力を注ぎ込んだ後一度別れ、その後数日姿を見せていなかったのだが―

アウラルはそういうとペコッと頭を下げる。

騒々しさに横の耳をぴくぴくさせながら振り返る。
身長が同じくらいの天使の胸元をじーと見て、その次に顔をじーと見た。

横の耳も指差してみせる。

同じくらいの身長の癖にリータさんの頭をぽふぽふとしようとしたり。

ばさばさばさ。

ふう、とため息をつき

自信作なのか、美味しそうに食べる様子へ嬉しそうに語る！

しみぢみ。

プティングもぐもぐ。

コランの宝石に顔を近づけながら、ほおほぉと相槌を打っている。

正統派忍者妖精であるシュタルに、応援めいた労い視線を向けるきちゅねであった。

そのままラズベリーパーティーだー！！

燃え上がっているのは気にならないのか気にしてないのかスルーしてつつ