俺様は猫である。
名前は無い。
ネコサンでもクロチャンでも、ま、まあ、知ってるならネコマタでも俺様を呼んでると解れば返事をしてやる。ニャーン。

俺様を猫又と見破った緑髪の下僕は、俺様を蹴飛ばしはしないが投げ飛ばしやがる。
暫く近付かんとこ。

それはそれとして、
最近葱のやつが静かで平和だ。
葱のやつが静かでも、鴨は変わらず葱持って歩いてる。そして葱振り回して強い。鴨なのににゃーんと鳴く。
なんでだ！？

　旧知殿、貴方に頼まれ、異世界に渡った新米猫又な黒猫の面倒を見ておりましたが。
この半年で大分猫も力を付けましたし、うっかり初対面で鴨を庇って猫の邪魔をした私は猫に嫌われてしまいましたし、嫌われついでに私の憑代を放置して猫が脱走する騒ぎまで起り…それでも猫は無事に生息可と解りましたし、私以外で猫の世話を好んでする者が現れましたし、私は猫に嫌われてますし…嫌われてますねぇ。
　そもそも猫の世話をする役目なのに、憑代を猫が嫌う葱にするのが間違えてます、旧知殿。
　私は私で、己の加護地域がさらに別の世界への介入点と相成り。己の土地と本の世界と猫が入り込んだ世界と、流石に3世界の同時援助は面倒くさ…いや、世話の手が回りきらず。
猫の世話からは手を引かせていただく旨を伝えます。
撤退に当たり、憑代に蓄えた力と今後使う予定で貯めていた力は、猫と鴨に直接振り分けました処、突然の強化で鴨が妙な生物に進化しましたが、まあ、落ち着けば戻るでしょう。

ところで旧知殿、私に会いに来るのは構いませんが、
会う度に私を食い荒らすのは止めていただけませんか。無理強いせずとも普通に頼まれれば力くらい分け与えます。
人の身でありながら既に人外の域に達している貴方に襲われますと、痛いし疲れるしできついのです。

撤退の件は了解。
もう一件は、貴君の力を喰らうのが主目的ではなく、
喰らう為にヤッてる手段行為そのものが楽しいからです。当分は楽しみを続けたいから諦めろん。

（…めろん？）
知ってます。ですから受け入れておりますが、あまりにもしつこいと拒絶しますよ。
貴方は楽しんでおられても、私は不快でしかないのをお忘れなく。

首根っこを押さえて連行しようとする。

小さな騒ぎを聞きつけて、零落の服の裾からわらわらこめつぶが現れた

太刀打ちできると見るや、血気盛んな一部のこめつぶたちはじりじりと距離を測りだした……

手の込んだプレゼントをありがとうと、
心の中で呟いたが、
誰にも聞かれる事なく消えて行きました。

――

あの葱、喋ってた奴じゃないのか？
そんな懸念が脳裏をよぎる。
でも差し出しちゃってるし、きっと葱側もそれを了承しているんだろう。
そうに違いない。だから喰っても無問題。

舌を伸ばして葱を奪い取り、丸ごと頬張る蛙。
口の中でもごもごゆっくりと、味わうように咀嚼する……。

猫さんの前でふわふわがぴょこぴょこ揺れてたら、そりゃあ跳び付かれるのは至極当然。
哀れにも毛玉兎は黒猫さんが満足するまで玩具としてじゃれ付かれる羽目に。

先程までガタガタ震えてた妖精二匹は鴨さんの陰に隠れて
黒猫さんにじゃれ付かれている毛玉兎を見守るように眺めていた。

……ちなみに、妖精二匹からの毛玉兎への好感度が若干上がったような如何だろうな。

抱えた黒猫の前足をおもむろに持ち上げる。

…思いっきり肉球を押した。

浮遊霊が敗者にまとわりついている

俺様に続け、下僕共。