戦いにおいて、相手の弱点を狙うという行為は恥ずべきものではない。
怪我をしているから遠慮する。
準備が間に合わなかったから配慮する。
――などというものは、スポーツの延長線上にあるもので、実戦ではありえない。

ガンマン二人が後日決闘することを取り決めたその直後、不用意に背を向け去ろうとした一人をもう一人が容赦なく撃ったというのはよくある話で、咎められるものではない。
実戦とはとどのつまり殺し合い、命のやりとりである。
どのような形であれ生き残れば勝者、死ねば敗者の烙印を押される。

己の強みだけでなく弱みを理解し、隠し、守ること。
相手の強みをいなし、弱みを狙い撃つこと。
全くの同じ土俵で戦うのではなく、強みと弱みの探りあい、押し付け合い。
それこそが、闘技大会という限られた空間での勝利に繋がるのだと、こっくりさんは考えている。

執拗に狙われ乱れた毛並みを整え、身を癒やす。
相変わらず、最前線に立つその身体は、生傷こそないものの程よく痛めつけられる。

彼女のやり方とはつまり、今の役割を遂行するための方法。
硬さで耐えるのではなく、柔軟さで耐える。
『硬い』硬さから、『柔らかい』硬さへの方向転換である。

この先を想像し、愉快そうにくくくと笑う。
こっくりさんにとって、性格が悪いという罵声は褒め言葉なのであった。

ラーフィーはまだもふもふしている！！全身毛だらけだ！！
しかし嬉しそうだ！！！