人生の岐路に立ち会うことはよくある。
自分の人生の岐路は勿論のこと、他人の人生の岐路に立ち会うことも、話を聞いていると多い。
今、数人がまた分かれ道に立とうとしている。
基本的には干渉せず、見ているだけであるべきだ。
その選択に対して、自分自身が責任を持つことを納得するために。

キョンシーには折り返しで手紙を書かせることにしてある。
結果はどうでもいいが、データは取れただろうか。
今のところ契約者へのフィードバックは見受けられない。
エンブリオが傷付いても、契約者は何ともない、というのが節理らしい。

……どうやら、あと数日で一旦の限界が来るようだ。
暫くしたら、人から離れなければ。
山か何処かに隠れることにしよう。

なんとか勝利をおさめることができた。
闘技大会に放り込まれて早3日。
少し戦うことにも慣れてはきたものの、本来は私は戦うエンブリオではない。
やはり、体の治りが遅い。　抑々傷を負う想定があまり為されていないのだろう。

昔の夢を見た。
いつも通り誰かが目の前にいて、謝る声と共に殴り殺される。
……しかし、いつもと違うところがひとつだけあった。

最後に、セーラー服。　おそらく私の返り血を浴びたセーラー服が、そこに立っていた。
私を殴り殺した人物は、少女だった。

コジローは何も言わなかった。見送る。ただ見送る。
そして、姿が消えた後、折り紙を手に取り、静かに斬り捨てた。

誰にも届かぬ独り言をポツポツと呟き、そして――

最後の呟きが静かに、夜空へと消えた。

複雑な表情でポツリと呟く青年。

呟いた言の葉はどこか独白にも似ている。
感情は薄い。
問いに、一度まばたくと青年は肩を竦め口を開く。