貧しきは心の眼を闇に閉ざす。

　色々あって。
　ヴァル殿の姿を見ていたら、
　私も傭兵として働き口を探してみようと思い立った訳だ。

　もちろん、占術の商売が捗っていない訳じゃない。
　ただ、食っていけるほ　儲かっている訳でもない。

　毎日十分に食べられるほどの金もそうだが、
　そろそろ衣服の方を新調したいと考えたのだ。
　もうこの服も随分煤けて、大変なことになっている。商売には身形も大事だ。

　吉日とは即ちその日にあり。
　酒場に張り紙を頼み、僥倖なことにすぐ雇い主が現れた。
　リラヴェル・カマック――その少女の名。

　第一印象。迷い子のような相と、ただしかし気丈さはある。
　盲目だからだろうか、人と関わることへの躊躇が見られた。
　努めて優しく接してみるもやはりぎこちない。打ち解けられるといいが。

　そして男ともう一人の少女。
　オオガミ殿は実に明朗快活な人物で、手合わせや飲み比べを願える良い相手だと思う。
　ラフカディオ殿は……やや変わっている。悪い人ではないと感じた。物語とは何だろう？

　戦士が一人で前を請け負うのは負担が大きい、という訳で私に白羽の矢が立った。

　契約内容を簡単に言えば、必要な時に手を貸すとい　具合だ。
　対価に多少の分前と――特に！――十分な食事を要求したら、変な顔をされた。
　結構真面目な話なんだけどな？

　＊＊＊＊＊

　ますます腕を磨かねばと息巻いた手前。
　炎の力が底を尽きそうなのが、一抹の不安となっていた。
　サラマンダーは心なしか疲れている。事典亭の酒で少しは滋養をとれただろうか、心配だ。

　内なる炎は命の一部。マナに対するオド。殺した命で植えつけられた力。
　当然、火は薪をくべ続け燃やさなければ消える。
　私の場合、契約した炎のエンブリオから賄っているのが相当する。
　他にも方法はあるのかもしれないけど、今はこれが精一杯。

　私がこうして魔力を身にまとい戦えるのも、不本意　がら両親のおせっかいのお陰だ。
　尽きてすぐ死ぬことはないが、妖精の呪い／恨みが身を蝕む。
　膚は乾き、いずれ臓は干上がり、緩やかな死を齎す。

　――などと、わざとらしく、大袈裟に、言われたが。
　どうせ此度の戦でポンと死ぬ可能性もあるし、人間どこで死ぬか判らない。
　「せいぜいが悔いなきよう生きることだ、とお祖父様、あなたは笑っていましたね」。

　とはいえやっぱり死ぬのは嫌だな。今までのように、這ってでも生きてやる。
　美味しいものが食べたい、強い相手と戦いたい。
　魔力は尽きそうだけど、欲は尽きないもの！

　ああ、雇い主殿に早速何かねだってみようかな……。
　うん、そうしよう。

ナスルの表情を別の方向に解釈したらしい。
主にその、『女王様』という職業の。

ハッタリもかけられる。とこちらはこちらで可笑しそうに笑っている。

国境を超えることに罰則がないことを強調する。

肉汁が溢れるポテトとか。とちょっと遠い目で。

くすくすと笑い、悪戯っぽくコノエに目配せをする。
コノエも小さく微笑を浮かべて応じた。

どう？　と無邪気に微笑んだ。

戻ってきたかと思えば何か胡散臭いものを売りつけようとされた。
散々凹ましといて、続いてコレとは鬼畜の所業である。

うわこいつくそうさんくせぇ。
そう言いたげな顔であった。

言われたとおり、石を取り出し。水平にして手渡す。

せっせとメルンストゥーラを集めるナスルを横目に、微笑む。

ナスルの濁った言葉に合わせるよう、霧のような言葉で返事をする。
そして煌めくメルンストゥーラに、目線を流した。

一瞬、頭をかいて照れたような考えているような顔をする