ちいさなおとこのことくろいねこがいっしょになってわらいあっていました。
おとこのことねこはとてもしあわせそうでした。
なぜかかんじたなつかしさに、猫はまたなきそうになってしまいます。
なんでこんなきもちになるんだろう？
そのこたえはわからないまま――








ぱちり、と猫のめがひらきました。
どうやらないて、ないて、なきつかれてねむってしまったようです。

めにはうっすらとなみだのあと。
なにかはわすれてしまったけれど、とってもふしぎなゆめをみたきがします。
なみだをごしごしとこすると、猫はたちあがります。


だれもふこうにしたくない。
もう、だれかにふかくかかわってはいけない。
ふかくかかわってしまったら、いずれふこうにしてしまうから。

そうして猫はみんなのもとをはなれ、ひとりになりました。



でも――

だれかとかかわることでふこうにしてしまうなら――

このせかいに、猫のいばしょはあるのでしょうか――？











もしも。

もしも、猫がいるだけでだれかをふこうにしてしまうなら。

それは――




『小生は――』




ふるふるとかぶりをふると、ぎゅっとこぶしをにぎりしめます。
まだやるべきことはあるのです。

だれかをふこうにしてしまうなら。
それならば。

『小生が――小生がわるいおうさまをふこうにすればみんなはきっとわらってくれるのです――？』

そのさきのことは、いまはかんがえるときじゃない。
ぜんぶおわったら、そのときは――


猫はふたたびおうさまのもとへとすすみはじめました。

かーこが『あっち』と示した先には、石や木のかけらや紐が設置されていた。

ロクさんにならって両手を合わせ、メイを見る。
ややあきれつつも、それに応えるようにして。

かーこは言われた通りに狙って命中させる。
ただ、距離がやや遠いせいか、一回外したようだ。

ブルーノおにいさんは、ロク＝リクくんに抱き着かれて
とても嬉しそうです。

大きなお兄さんは、その場に腰かけると、長い爪を器用に使いながら、
魚肉ソーセージの包みをむきはじめました。

もじもじと暴れる猫をみて、くすりっと笑いながら
わかっているにもかかわらず、撫で撫でと頭を撫でて。

すこしなきそうなかおをしながら、まりょくのやをつがえました。

なみだをぬぐうと、ふたたびあるきはじめました。