私は、私が自らの手で、自らのためだけに、人を斬る約束をしました。
そこに律法騎士団の大義名分はありません。律法騎士団の大義の下に行われる行為であっても、
それが私自身の、私が私の内側で見出す責任の在り処について、保証はしてくれません。

私は、私のために、人を斬る。ごまかすことはしません。人のせいにはしません。私は己の中にある残酷さを、冷酷さを、貪欲さを、認めなければいけません。化け物であろうが、人間であろうが、大義の下に許されようが、それは、それは私の中にある。

私に、ルヴナンは必要でした。
……私は、恐らく、既に自らの記憶に到達する手段を持っています。
私は、自らの過去に、自分自身に向き合うことが、きっと出来る。ルヴナンを用いなくても、それは出来ます。

それに応える言葉は、声はありません。

――過去に到達する手段があっても、私は。
私には、そのルヴナンが必要でした。
向き合うための、トリガーとして。それを覚悟するためのものとして、私にはルヴナンが必要でした。
全てが、思い違いだと、言ってしまうことは出来ます。自ら見出した結論を、自らが、そんな都合のいいことは信じられないくせに、都合良く、信じてもいない嘘で、それを間違っていると訝ることだって出来てしまいます。
それでは、意味がない。

そんな都合の良いことじゃ、意味が、意味がないのです。

私は、湯気の立つ紅茶に、言われた通りの量を入れ、そのまま同じスプーンでかき混ぜます。
念のため、ルヴナンをしっかりとしまい込んで、周囲を確認しました。
幻覚で私が無力化されてしまうかもしれないですし、あるいは、私が誰かを傷つけてしまう可能性も、ないわけじゃありません。

すべての準備を終えて、私は、それを口に運びます。

やがて、瞼の裏で生じる激しい明滅。
目を開いても、それが閉じているのか開いているのかさえ分からない。
なにかが、私の頭を掴んで、ゆっくりと円を描くように、首を回しているかのような感覚。

「それは君だけでは成せないことだよ」

ナイフ数本を鉤爪のようにして縦に構え、相手の一撃を強引に止める。
…だが力負けしたのか、ナイフが砕けると同時に体勢を僅かに崩した。

攻撃の気配が変わったことを悟り、口元を更に緩める。

前屈みに重心乗せた上で左腕を突き出すように構え、避けようとしない。
恐らくは全力で振り下ろされたであろう斧に対し、首筋を庇うようにしながら受け止めようとした。

…が、激しい摩擦音と火花の末に左腕が原形もなくなる勢いで吹き飛ばされた。
腕のあった場所からは紅白交ざった液体や気体が僅かに漏れ出す。
直後に舌打ちしてやや後退するが、当然避けきれるはずもなく。
腹部の一部を抉り取られる程の裂傷を負った。斧が振られた方向に少量の血飛沫が舞い、肉が飛び散る。
表情が歪んだ。

片腕が吹き飛ばされても、なお戦うことを止めようとしない。
身体を大きく捻り、勢いを付けた状態で相手の肩目掛けナイフを突き立てようと試みる。
…右腕がナイフ諸共紅白のオーラに包まれた。

頭をふかぶかと下げる。