※アマド（Eno.758）の日記からの続きです。

ガルボとブルーノはキッチンで夕ご飯の支度をしていた。
ブルーノの前の鍋からはもくもくと黒煙が上がっている。
料理というより炭を作っている、と言った方がいいかもしれない。

鍋をのぞき込む二人の前に、オオカミの姿のアマドが駆け込んでくる。

人の姿に戻り、籠のようなものを差し出す。中では金色の狐がぐったりと横たわっていた。

ガルボは急いで自分の鞄へ駆け寄る。
中から若草色の液体の入った瓶を取り出し、小さくなったミヤコを抱き上げる。

ミヤコの吻を開け、薬を流し込む。
暴れるミヤコの口を押さえ込み、なんとか飲み込ませることに成功した。
薬を全て飲み込んでからすこし経つと、ミヤコの身体が徐々に元の姿に戻り始める。
獣毛が消えていき、体躯も人間のそれへと変化していく。

寝込むミヤコの手を握りながら、ガルボは独り言のように呟く。
ミヤコの安静を確認すると、心配そうに待つアマドとブルーノの元へと戻った。

――妖精の森

アマドとガルボは、近くを歩いていた赤いフードの少女と、髪に植物が絡まっている少女に声をかけた。


ブルーノ（Eno.914）の日記へ続く





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ある科学者の記憶

私が目を開くより先に感じたのは、雨だった。
土埃を濡らす匂い。
葉を叩く音。
そして、全身を打つ鋭い冷たさ。
皮膚から地面へと伝い落ちる滴を感じながら、ゆっくりと目を開く。
空は暗く、底無しの闇からわき出るような雨粒すら見えない。
冷たく湿った空気を肺に取り入れれば、思い出したように痛みが全身へと、じわりじわりと広がっていく。
実験失敗。
頭の中にその文字が浮かぶ。
一体何度目の失敗だろうか。
今度こそ、研究所を追い出されるかもしれない。
その場合は、どうすればいいだろうか。
異世界に物質を転送する、だなんて現実味の無い実験を受け入れてくれる研究所が、他にあるだろうか。
もう、先のことを考えるのが億劫になってしまった。
目を閉じて、再び雨と時が流れるままに身を委ねる。


ふと、雨の中に微かに違う音が混じっていることに気が付く。
ゆっくりとではあるが、こちらに近付いているようだった。
近付くにつれ、それが音ではないことが分かる。
これは――少女の、声？

モクラはクリと共に近づいてきた存在を見やった
表情にはあらわさないが警戒している様子は感じ取れた

人型でありながら、人には付いていないモノを付けた彼らを警戒しつつ質問をした

そして敵意が無い事とある者を探していることを把握すると警戒を解き、質問に答えた。

そう言って同行者であるクリスに見せられた絵の人間について尋ねた