■One sword and preparedness...


剣を持つ以上は、傷つける事も、傷つく事も。
そして命を奪う事も、奪われる事も。命を見送る事も。
全てを覚悟してなお、剣をその手に取る覚悟があるか否か――


「……初心を思い出せ、って事なのかねぇ」


以前酷い目にあった水辺に、今度は単身で赴こうとしている道中での、恒例の早朝鍛錬の後。
愛剣を鞘に収める前に、手中にあるそれの、もう慣れた重みを確かめながら、ぽつりと呟く。


“多分人が死ぬの、たくさん見てきたんですよね――”
“怖くないの、ですか？”


ここ暫く、そんな言葉や問いかけを耳にする機会があったからだろうか。
はぐれ者だった自分に、剣術諸所を叩き込んでくれた師に当る人物の言葉を、思い出す。


同郷の仲間達は、ほぼ全員が優れた魔法使い。
体術や剣術を同時に扱う者も居るが、あくまで補助程度という者ばかりで、逆に体術剣術のみに特化しているのは現状自分１人だけだ。

近接戦ではない魔術戦との差異。
最大のそれは……自身の手で何かを“直接”傷つけて、時にその命をその手で絶つ事。

魔法の才がないと悟り、その道しかなかったとしても、その道を選ぶ折と、本当に外の世界へと剣を手にして向かうと決めた折。
２度それを問われたのは、当然だったのかもしれない。


覚悟を決めたつもりで本当はちゃんと出来てなんて居なかった。
模擬戦ではなく、実戦で。
一番最初に“生きている相手”を剣で斬った折の肉を斬る独特の嫌な感触と、浴びた返り血の香りと、生命の華散らす温もり。

あの時に多分問いかけの意味と覚悟を自身に問い直して、道を定めた。
それから幾度となくそれらを経験、体感していたとしても。
この先ずっとあの初めての経験諸所は忘れないだろうし、また忘れてもならないのだろう。


「……今の私を見たら、アンタはどう思うんだろうな。……もっと話しておけばよかったなって、今にして思うよ」


手にしていた長剣を腰の鞘に収めながら、向かう先の水辺が昇りはじめた朝日を反射して輝く様を見つめる。


同族の中では比較的感情の起伏は見える人物ではあったが、そう口数が多い人でもなかった。
何時も何処か曖昧な笑みのようなものを浮かべているその存在は、正直何を考えているのかも分からないと何度も思った。


それでも当時、魔術並みに武術にも優れていた希少な存在が、己の武術指南を引き受けてくれたその理由は。
その頃は自身を高める事だけに夢中だった所為か、結局最後まで知る事は無かった。


異世界からの派遣で戻った折に、あまりに突然に知らされたからだ。
天命ではなく事故のような形で、派遣先のある異世界の１つでその生を終えたのだと。


――先だっての、翼ある少女のリクエストをふと思い出す。

初めて“現存する一族随一の歌姫”として奏でた音色が、かの存在を送る為の“葬送歌”であり“鎮魂歌”でもあるそれであったのは、皮肉なものだった。


そして同族が辛うじて取り戻してきたという、かの存在が手にしていた長剣だけが。
墓標のようにして、とある場所で静かに眠っている。


「……出来れば、もう１度。剣を交えて、打ち合ってみたかった。今なら……ちょっと位は、アンタが考えてた事が分かるかもしれないからね」


剣を持つ以上は、傷つける事も、傷つく事も。
そして命を奪う事も、奪われる事も。命を見送る事も。
全てを覚悟してなお、剣をその手に取る覚悟があるか否か――


脳裏に何度でも思い出しては響く、静かな声に対して。


「全てを覚悟してなお、私は剣を手に取って戦い続けるって決めたし、今でもその思いは変わらない。アンタが剣術武術を教えてくれたから、私は私の居場所と生き方を見出せた。そして今は私の往く道を切り開くために、剣を振るいたい。まだまだ色々甘いとは思うけど……どっかで見ててくれると有難いね」


恐らくその全てを、長剣の神聖石に宿るアークは聞き届けているのを承知で口にして、再度覚悟を言葉にする。
その思いを、自身に刻み付けるように。


「……さてと。一休みしたら行こうか。この先にいるでっかい帝王イカとやらを拝みに、ね。大量に焼きイカが出来たら差し入れするって約束もあるし」

鋭く自身を磨き上げてゆく　一本の剣をただひたすらに鍛え磨いて
何時かそれが名剣と呼ばれる日がくる　そんな果て無き場所を目指すように――

自らはそう見えたけど、見えただけ。主観と第三者目線は一致しないかもしれない

そう言われるのは、魔法使いとして、術師として喜ばしい限り。

頭を軽く叩かれると、ちょっと安心したように顔を緩ませる。

言われ慣れないと聞いて、きょとんとした顔になる。

あまりそういうのが得意でない話を聞くと苦笑い。

……少し違和感のあることを言った。

（知りたくはあるが、そうそう教えられるモノでもないのかもしれない…
任務とは得てしてそういうモノ。少々ねだるような視線を向けるが…）

（ますます興味がわいてきた。
…それにしても、出す例が少々オーバーなものが多い様な気もするが）

（原種の種族柄仕方ない事とはいえ、どこか少々焦る様な感じで
否定に入った。… 少々格好悪い）

(… と、取りあえずは話を変えて銃器のお話。
彼女の表情や眼の輝きからして、興味は上々の様だ。
それに満足し、どこか得意げに話し始める…）

（確認する前ではあるが、既にどこか少しばかり驚きを覚えているようだ…
そして、彼女が指した銃を見るとニヤリと笑い差し出した）

（人によっては… いや、大部分の人が首を傾げるであろう内容だった…。
本人的には、面白こだわりポイントと思っているようだが… それはそうと）

（と、いいつつ… ２丁を手際よく引き金を引けば発射できる状態にもっていき手渡した）

（意外と、その不思議な法則性に順応している様だ…
やはり、幾つもの世界を巡り歩いているだけはあるのか？）

（鳥はある意味力強いが、余計な筋肉も骨もつけるワケにはいかない…
必然的にパワーは、どうしても落ちる事が多いのだ。
… 翼と脚という、約二点を除いては）

（少々困った様な表情をした刹那…
これは予想外、何と武具から… 妖精？にも見える何かが出てきた。
目をこすってみるが、幻ではないようだ…）

（二人の短いやり取りから、その二つの単語を拾い呟いた。
恐らく、アークとは妖精の様な少年の名前だろう。

… と、そのアークと呼ばれた何かはコチラに話し掛けてきた）

（出てきた少年へは、にこやかに挨拶をして。
そして、シェリィからの説明を聞けば得心して…）

（彼のノリに合わせているのか、どこか持ち上げる様な言動をしておいて…
あわよくば、他にも色々と聞けるかも知れない故に）

（フッ、と少し笑って…）

口調は愉快そのもの、という様子であったが、目はどこか遠くを見ている、といった様子だった。

龍はシェリィの配慮を意識しつつも言った。

俺は自分が何者かも知れない存在だ。だが、奴はそれを知っているらしい。
口を割らせることはさして難しいわけでもなさそうだが・・・

龍は、シェリィの瞳を見つめた。
彼にとっては彼女はどこか、到るべき地を求める旅人のありように見えた。

龍は何気ない調子で右手を差し出した。

　足元を通り過ぎた白いカタマリが、逆向きに転がって戻って来た。

　ジャックは視線を逸らして髭をふるわせた。

ううん、と首をひねる。

むむー、とまた首をひねる

うんうん、と頷く。

あはは、と苦笑する。

うん、と頷く。

あはは、と笑う。

むむー、とひとしきり情報を整理している模様。

思わず、といった体で微妙に控えめに問いかけた。

はふ、とため息

どことなく、しんみりという。

うん、と頷く

はふ、と息をついた。

あはは、と苦笑する。

なんとはなしに、目が輝いているようにも見える。

ぺこり、と頭を下げつつ息をつく

物騒な言葉が耳に入っていないのか、聞いていないのか……
合成技術に興味津々、という体であった。

はい、と笑う。

反省、とうなだれる

突然現れたアークに驚きじっと見つめていたが、
神聖霊とマスターのやりとりに、くすくすと笑いが漏れる。

右腕を胸の高さまで持ち上げると、肘間接が青い光を放ち、分離する。
本体から離れた前腕は宙に浮き、くるくると回っている。

（一人ぼっち仲間という言葉に安心して、更に不安は消えたようだ）

（何が怖いのか、と問いかけられて、考え込む。）

（綺麗な所作で腰に下げた鞘から長剣を抜き放ち、片手で構えを取る）

（綺麗な挙動で長剣を鞘に収め）

（綺麗な所作で腰に下げた鞘から長剣を抜き放つ、軽く対峙者に頭を下げる）

（綺麗な所作で腰に下げた鞘へ長剣を戻しつつ）

（慎重に対象に極々絞った小声で囁くように）

手にしていた紙包みを差し出す。