耳がいくらよくたって、この世の全てを聞き取れるわけじゃない。

慣れた音、親しんだ音、好きな音、注意して聞いている音、は、よく聞くことができるし、
そうでなければ、気づかない音だってある。




（気づいたときには、もう、フライバイは居なかった）




（かわりに見つけたのは、1匹のエンブリオ）




犬型のエンブリオ、フライバイのデビル。
・・・息の絶え絶えの。

珍しく何か考えている。

（相手の反応にふふっと楽しそうに笑って）

（説明に楽しそうに左右色違いの目を細め）

（怒るだろうか、と思いつつも、ぽん、と低い位置にある帽子に軽く手を乗せた。頑張れ、といわんばかりに）

前脚をぎゅっと握りしめて、座りなおす。

こうね、ぐちゃっとね、ぐわーってねー！
などとやたらと擬音語を並べては前脚で見えないなにかをこねこねしている。
或いは、轆轤を無為にこねくり回しているようにも見える。