あまり気分の良い話題ではなかったが、攻城は順調で手持ち無沙汰になる時間も増えてきた。

何より、こっちの世界に来て初めて会ったまともな話し相手がこの狼だ。
くだらない過去を話すことでより深い関係を築けるのなら、そのくらいはしてもいい。
なにせ、今はもうそのしがらみから開放されている。

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――五年前。


おれは二十代の半ばに差し掛かってもまっとうな仕事に就けず、昼間っからぷらぷらしてた。

たまにコンビニでバイトでもしてみりゃ、その日に三回強盗に押し入られ、給料どころか損失の穴埋めで逆に金を取られた。

おれの住んでたオオサカって街はひどいもんでな。
世界中からありとあらゆるクズが集まってくる犯罪都市だった。

そんな職も金も無いおれが頼るもんは両親だけだった。

だがあの二人はあっさりといっぺんに死んじまった。
心臓発作だった。
原因？ドラッグだよ。致死量の。珍しい話じゃねえ。

頼れるもんをそんな感じであっさり失っちまって、これはどうにか稼がねえと死んじまうってなった。

　　　 あきょう
よし、亜侠でもやるか。

そんな感じでおれは亜侠になった。

亜侠ってのはチンピラみたいなもんだ。
いつか必ずビッグなホンモノになってやる、そんな夢を持った連中のことだ。

亜侠ってのは大抵チームを組む。
おれは亜侠の溜まり場へ繰り出し、なんやかやあってチームに入ることができた。


結果から言えば、チームはその日のうちに解散した。

リーダーは色ボケ刑事に利き腕を吹っ飛ばされて病院送り。
ムードメーカーのあんちゃんは先走って1人で強盗やってブタ箱行き。
荒事に向いてそうなおっちゃんは銃買った途端乱射してカタギをぶち殺して精神病院行き。

まぁダメな奴は何やってもダメってな。全くその通りだ。
何ひとつ成し遂げるまもなく、あっという間に終わっちまった。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 あっせん
元・リーダーの見舞いついでに、なんか仕事の斡旋できねえかって頼み込んでな。
あいつはやめとけってしきりに言ってたが、野垂れ死ぬよりマシだと思って就職先を紹介してもらったんだ。



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　タンポポの神様があらわれた！　▼

　なんかビックリしているが、タンポポ荘に入居したいという言葉を聞いて顔をほころばせる。

　▶　どうぐ
　ポポロはタンポポ荘のルームキーを渡した！

　なんの警戒もせずにあっさりと鍵を手渡してしまうのは、受け取る側もちょっと大丈夫なのかこの管理人、と思ってしまうかもしれない。
　何はともあれ、タンポポ荘に住めるようになったようだ。

一瞬、目の前の男とどこかであったような気がしたが、ただ気がしただけだ。
記憶を探ってみても思い当たるようなことはない。
一種のデジャブというやつだろう。

何にせよ、見知らぬ男に抱きつかれて喜ぶ趣味はわしにはないし、

いきなり服を脱ぎ出すような男に、いい笑顔で抱きつかれるわけには、もっと行かない。

わしは男に抱きつかれないように杖を伸ばし、距離を取った。

いきなりのハイテンション。そしてアルコールの匂い。完全に出来上がった酔っぱらいが叫び、ジロジロと値踏みするように眺めている。

ごそごそと服の、胸の中に手を入れて引っ張りだされてくる一升瓶。
指先で摘んで揺らすも、何もはいっていないようだ。

無いならしょうがないとぶつぶつと言いながら、ふらつく足取りでどこかへと去っていきます。

小さな精霊がぺこぺこと頭を下げて謝罪し、慌てて主の後をおいかけていきました。

いかにも悪党という風体だが表情は柔らかい。
あくまで職業モヒカンなのだ。ビジネスでなければ無用な威圧はしない。

倒れた相手に手を差し伸べる。